■ 安住の宿を得た野良猫の表情は激変する
『ありがとう!わさびちゃん』の続編『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館)には、保護された元野良猫や殺処分になる前に保健所から引き出された猫など、運命の分かれ道で命を救われ、温かい家族に迎えられた猫たちを紹介する「全国の保護猫ちゃん」というページがあります。
中には、明らかに以前は人に飼われていたのに、捨てられて彷徨っているところを保護された猫もいます。
例えば、白玉。とある農場にある日、突然姿を現した真っ白猫で、首にはくっきりと首輪のあとがありました。
保護当時、推定5歳。ずいぶんと人馴れしたその白猫は、人がくるとすぐにごろんと寝転がってお腹を見せたり、ごはん頂戴と催促したり。
ただ、農場にはトラクターなどの重機もあり、危険がいっぱいでした。農場主はその猫が農場にいることを嫌い、あまり親切にはしてくれなかったようです。
仕事でその農場をたびたび訪れていた保護主さんは、日に日にやせ細って、白い毛も泥まみれになっていく様子を見て、不憫に思っていたそう。
結局、周囲の人たちと相談して保護することにしたのでした。紆余曲折はあったものの、白玉という名前をもらって、今では保護主さんの実家で幸せに暮らしています。
白玉がどういった事情で「捨て猫」になったのかは不明です。
猫が捨てられる場合、様々なケースが考えられます。
(1)飼い主さんが引っ越しの際、捨てて行く(遠くて連れて行けない、新居がペット不可など)。
(2)飼い主さんが亡くなる、または施設などに入るため、親族が捨てる(高齢、事故死など)。
(3)かわいいと思って飼い始めたが飽きた・懐かない・家族にアレルギーあることが発覚した・いらなくなったから捨てる。
(4)ブリーダーなどが成長して売れなくなった・病気があることがわかり売れないため捨てる。
(5)野良猫を拾ってきた・かわいくて買ってきたものの、家族に反対されて捨てる。……などといった理由が多いと思います。(順不同)
外にいる猫は寿命が短いといわれています。殺処分される猫の数は、各自治体やボランティア団体などによる啓発活動の効果もあって年々減ってきてはいますが、それでも平成26年度の殺処分数は79,745匹…。
これはあくまで動物愛護センターなどで把握している公的な数字ですが、おそらくそれ以上にたくさんの猫たちが、路上や公園の片隅などで誰にも看取られることもなく、ひっそりと亡くなっている現実があります。
猫に限らず、ペットを飼うには、一生、家族として暮らしを共にする覚悟が必要です。
動物を捨てることは、「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)に基づいて罰則が科せられる、りっぱな犯罪なのです。
■わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。
文/平松温子
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