心に残る風景を写真に収めておきたい。自慢のカメラやレンズを所有しているのなら尚更のこと。しかし「思ったように写らない」「理想の構図なのに何かが違う」と首を捻った経験はないだろうか?

そんな方々に朗報。一目で夏を彷彿とさせる写真の撮り方を、ニコンカレッジ講師である写真家の斉藤勝則氏が教えてくれた。

結論から述べると、夏の写真の肝は「影」にあるのだという。まずは下の写真をご覧いただきたい。

pic_01

蒼く澄み渡る海と空、そして白い砂浜。これだけで「夏写真」の定番とも言える構図であるが、そこに椰子の木の影をアクセントに加えた一枚は、白い砂浜と黒い影の対比が見るものを惹きつける。

加えて手前から影を撮影することで、写真に更なる奥行きも与えた。

氏は撮影方法を次のように図解している。

pic_02
撮られた時間は正午直前。この写真は斜光や反逆光により大きく異なる影の特性を鑑みて、真上から太陽が照りつけるこの瞬間でしか撮れない渾身の一枚。影の力を存分に引き出した極上の一枚はこうして撮られたのだった。

続いての作例はこちら。

pic_03

同じ椰子の木の影でも、先ほどの写真とは受ける印象が違うだろう。これは早朝、波が穏やかで椰子の木が水面にはっきりと写り込んでいる瞬間を狙った一枚だ。砂浜を広く写すことにより構図を安定させ、さらに足跡を入れることで人の気配をも感じさせる写真になったという。

先ほどの一枚が真夏の海を切り取った一枚だとすると、こちらは爽やかな浜辺を彷彿とさせる一枚といったところか。

最後にもう一枚ご覧いただきたい。

pic_04

被写体はごく普通のハイビスカス。注目して欲しいのは「影の濃淡」である。

ぼけている影とはっきりしている影の両方を活かすことにより不思議な遠近感を表現。逆光に写るハイビスカスも鮮明で、真夏を感じさせる一枚に仕上がった。

以上、夏写真の撮影のコツをご紹介したが、いかがだろうか? どこにでもある被写体であっても、撮り方次第では極上の写真になり得るとお分かりいただけたであろう。

これらの写真は、ニコン公式ホームページ内にある『Enjoy ニコン 好きな写真の撮り方レシピ 「影をいかした夏スナップ」』にて掲載されているので、氏の詳しい説明などはそちらでも確認していただきたい。他にも撮影に役立つ手法が紹介されているので、カメラの腕を上げたい人にはおすすめだ。

■Enjoy ニコン 好きな写真の撮り方レシピ 「影をいかした夏スナップ」
http://www.nikon-image.com/enjoy/phototech/recipe/recipe49.html

見るものを思わず唸らせる夏写真は「影」にあり。今年の夏も残り少なくなったが、「いい影」を探して近所を散策してみてはいかがだろうか? 思わぬ構図に巡り会えるかもしれない。

斎藤先生プロフィール画像
■指導:斉藤勝則氏
神奈川県生まれ。東海大学工学部生産機械工学科卒業。写真家・内田隆章氏に師事しカメラマンになる。1996年フォトデザイン会社ケー・エス・ワン設立。風景、スナップ、静物、ポートレート、スポーツ、水中までオールラウンドの撮影をこなし動画撮影も行う。現ニコンカレッジ講師担当。(社)日本写真家協会(JPS)会員。

取材・文/田中十兄

 

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