【にゃんこサライ 第12回】
飼い主の問いかけに「ニャ~」と反応するのは、猫も人間の言葉を理解している証拠?
空前の猫ブームといわれる昨今。でも、猫の生活や行動パターンについては、意外と知られていないことが多いようです。人間や犬の行動に当てはめて考えて、まったく違う解釈をしてしまっていることも少なくありません。昔から猫を飼っているから猫の性格や習性を熟知していると思っていても、じつは勘違いしていたということが結構あるようです。
そこで、動物行動学の専門医・入交眞巳先生(日本獣医師生命科学大学)にお話を伺いながら、猫との暮らしで目の当たりにする行動や習性について、専門的な研究に基づいた猫の真相を解明していきたいと思います。
■飼い主さんは誰もが「恋する乙女」
猫飼いさんの気持ちというのは、どこか恋心にも似たようなものがあるのではないでしょうか。一般的に猫はよく「ツンデレ」といわれたりしますし、映画のタイトルにもなっているように「猫なんかよんでも来ない」ということもままあります。
でも、飼い主さんとしては家族の一員である猫のことが大好きで、大人の男性でも猫を相手にする時はつい甘い声になってしまったり、仕事をしていても「今ごろ何してるかなぁ」と猫のことをつい考えてしまったりすることもあるでしょう。男女に関係なく、猫が大好きな飼い主さんの心境は、まさに「恋する乙女」のようです。
そんな猫飼いさんたちが抱いている素朴かつ重要な疑問がコレです。
「うちの子は私のことをどう思っているの?」
「うちの子は私の言葉を理解しているのかな?」
まず、最初の疑問から。前々回、猫のすりすり行動について以前お話ししました。柱やドアなどに顔をすりすりして、口の周囲、頬(ほほ)の器官から分泌されるフェロモンを塗り付けることで、「ここはボクのおうち」「ここは気持ちのいい場所」という安心を得ているという話でした(詳しい記事を読む)。
これは自分の情報を他の猫に伝えるためのマーキングとは違うのかもしれません。ちなみに、仕事から帰った飼い主さんを玄関でお出迎えし、足元にすりすりっと顔をすりつけるのは、「ここは気持ちのいい場所」の意味ではなく、「おかえり!」「まっていたよ!」という表現であると考えてよいと思います。じつは猫同士でも、仲のいい猫さんが狩りから帰ってくるとお互いに顔と体をすり寄せて挨拶をすることがわかっているので、おそらく猫同士のこの挨拶を仲のいい人に対しても行なっているのだと思います。
野良出身の猫さんを飼い始めたばかりの頃は、警戒してなかなか近づいてくれなかったけれど、ある日、足元にすりっと体を寄せてきてくれて、「ようやく心を開いてくれた!」と感動した経験のある人も多いのではないでしょうか。そう、猫にとって”すりすり”の行動は「挨拶」、それも気を許す相手にしかしない挨拶です。もっといえば「好き」の体現なのです。ですから、もし猫さんが尻尾を上げてあなたに近づいてきて、身体をスリッとしているのであれば、安心してください、猫はあなたのことを好きなはずです。
そんな愛猫は、はたして人の言葉を理解しているのでしょうか?
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