服を着せたら猫は嫌がるのか?を猫の気持ちになって考えてみる【猫のふしぎ第19回】

空前の猫ブームといわれる昨今。でも、猫の生活や行動パターンについては、意外と知られていないことが多いようです。人間や犬の行動に当てはめて考えて、まったく違う解釈をしてしまっていることも少なくありません。昔から猫を飼っているから猫の性格や習性を熟知していると思っていても、じつは勘違いしていたということが結構あるようです。

そこで、動物行動学の専門医・入交眞巳先生(日本獣医師生命科学大学)にお話を伺いながら、猫との暮らしで目の当たりにする行動や習性について、専門的な研究に基づいた猫の真相に迫っていきます。

おばあちゃんお手製のピンクのおくるみ(医療用拘束具)に包まれた姿が、タラコみたでとってもかわいかったわさびちゃん。

おばあちゃんお手製のピンクのおくるみ(医療用拘束具)に包まれた姿が、タラコみたでとってもかわいかったわさびちゃん。

■理由があって服を着ている猫たちもいる

最近は、おしゃれな服を着た猫さんの写真がSNSなどにアップされ、多くの人の目に触れることが増えています。そうした猫さんたちを見た人たちの中には、様々な意見があると思います。「かわいい!」という人もいれば、中には「猫に服を着せるのは不自然なことだ」と批判する方もいるかもしれません。

でも、猫が服を着ている時は、全部が全部、飼い主さん好みのファッションによるものではなく、中にはそれ以外の理由があって服を着ている可能性がある、という獣医さん的視点からお話をしたいと思います。

猫さんが服を着ている場合、いろいろなケースが考えられます。中には、医療的な理由があって服を着ている猫さんもいます。例えば、手術をした後で、まだ縫合の傷が残っている猫さん。皮膚病を患っている猫さんや、舐めすぎて剥げてしまっているのを治そうしている過程の猫さんも、服を着ている場合があります。

それから、スフィンクスやドンスコイといった毛が非常に少ない品種の猫さんを日本で飼う場合、服を着せていないと寒くて風邪をひいてしまうこともあります。こういった事情で日ごろから服を着せている場合は、猫さんが動きやすいような服で、体にフィットして、着心地がいいものがいいですね。

ピンクのおくるみを着た姿が愛らしいと話題になったわさびちゃんも、カラスに襲われて口の中に大けがを負っていたため、保護した父さんと母さんはカテーテルと呼ばれる管を喉まで通して食事をさせていました。通常、そういう場合は動物病院で医療用の拘束具を着装させますが、拘束具は白い袋をかぶせるだけの味気ないものです。

わさびちゃんの場合、おばあちゃんが編んでくれた柔らかいニットのおくるみで、大きく開いた背中部分から体をすっぽり入れて、顔だけ固定する仕様になっていたそうです。暴れないよう優しく動きを制限して治療や食事をしやすくしている上、見た目もかわいくてほっこりしますので、猫にも人にも優しいよくできたおくるみだったと思います。

わさびちゃんちの母さんは、首輪選びに慎重です。これは、力がかかると外れるタイプのフックのついた首輪いろいろ。

わさびちゃんちの母さんは、首輪選びに慎重です。これは、力がかかると外れるタイプのフックのついた首輪いろいろ。

■首輪嫌いの子が首輪をつけてもらうには

「うちの子は首輪も嫌がるの」という飼い主さんもいるかもしれません。服はもちろん、首輪もイヤという猫さんでも、皮膚病になったり、首の周りが真菌で痒くなったりしたら、舐めたり掻いたりしないように服や首輪をつけなければならない時もあります。

掻く暇を与えないように遊ばせるのもコツですが、四六時中、遊んであげることもできませんよね。そういう場合は、大好きなおやつを与え、食べている間にそっと首輪をつけてみるといいでしょう。そして、嫌がる前に外します。これを何度か繰り返していくうちに、次第に首輪に慣れて着けてくれるようになります。

初めのうちは飼い主さんが見ている間だけ首輪を着けておいて、すっかり慣れて嫌がらなくなったら、ずっとつけていても大丈夫です。大切な家族である愛猫にとっても、飼い主さんにとっても気持ちよく、楽しく過ごせるよう、必要に応じて服や首輪を選べるといいですね。

名前にちなんで、本わさびの形のおくるみも登場。なんでもかわいく着こなすわさびちゃんでした。

名前にちなんで、本わさびの形のおくるみも登場。なんでもかわいく着こなすわさびちゃんでした。

■猫の気持ちになって

もし何らかの理由があって、例えば病気の治療などで服が必要な場合もありますが、そのような時は、猫の気持ちになって着せて頂くのが良いでしょう。

第一前提として、猫さんが嫌がっていないことと、不必要に動きに制限を与えないことが重要です(もちろん治療目的で動きに制限をつけるものもありますが、ただのファッションで動きに制限を与えてしまうものは歓迎できません)。

蒸れにくいものなど、素材にも気を付けたいところです。グルーミングができなくてストレスになってしまうこともあるので、必要がなければ長時間着せておくことも避けた方がいいでしょう。

また、いざという時すぐに脱げるようなものであること、危険がない場所に限定すること、飼い主さんが常に見ていること、といったことも重要になってきます。服を着たまま外に出て行ってしまい、万が一他の猫と喧嘩になって服に相手の爪がひっかかってしまったり、フェンスなどに服がひっかかってしまったり、といったことが起こると、場合によっては命の危険さえあります。

それは小さな子供と同じです。大人が見ていないところで、お子さんがネクタイをつけたまま走り回っていたりしたら、危険だと感じますよね。

これは服に限ったことではなく、首輪も同じです。名前や連絡先を書いた首輪は、万が一迷子になった時のことを考えると重要ですが、過度な装飾がついていたりして、狭いところに潜った時にひっかかって、首がしめられてしまうこともあります。

外に出さないように注意することがまず大事ですが、家の中であっても、首輪も服も、安全なものを、きつすぎず緩すぎず、適度に着装させてあげて下さい。

入交眞巳さん

指導/入交眞巳(いりまじり・まみ)
日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、米国に学び、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。日本ではただひとり、アメリカ獣医行動学専門医の資格を持つ。北里大学獣医学部講師を経て、現在は日本獣医生命科学大学獣医学部で講師を勤める傍ら、同動物医療センターの行動診療科で診察をしている。

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累計21万部を突破した「わさびちゃんシリーズ」の 第1弾『ありがとう! わさびちゃん』(小学館刊)。

■わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。

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