自ら義父との距離を置いてしまう理由
義父との関係はその後何年経っても、他人行儀のまま。しかし、母親の再婚を良かったと思えるポイントもあったそう。
「母親がこれまで一度も見たことがないほど、穏やかになったんです。人格が変わったように見えました。母親は家族とも、外の人間とも関係作りが決して上手ではなかった。でも、義父はとにかく話を聞いてくれる人で、そこで母親の欲求が満たされていたんじゃないかな。今までで一番楽しそうに見えました。そこは義父に感謝しています」
佳奈さんには、母親の再婚について、両極端な気持ちがあると言います。良かったのは母親が楽しそうなところとのことですが、反対の気持ちはどういったものなのでしょうか。
「義父とは何度も一緒に食事をしたこともありますし、今も2人は仲が良くて、再婚は良かったとは思います。でも、それは振り返って得た結果。義父のことをお父さんと思ったことは一度もありません。だって、私にはお父さんがいるから。父親は再婚もしておらず、ずっと勤めていた会社を辞めて、今は時間を持て余しているようで。姉と交代で様子を見に行ったりしています。
父親は決して口にはしないけど、やっぱり離婚後は少し寂しそうに見えることが多くて。そんな姿を見ていると、義父と仲良くすることに少し罪悪感もあるんです。適度な距離を保たなければと、自制心が働くというか……。この感情は、父親が退職後に強くなった気さえしています」
最後に、一度も佳奈さんから触れられなかった義父の親族との関係について聞いてみました。
「知りません。義父の両親はすでに亡くなっているとは聞いていますが、兄弟の話などは本人が一切話さないから、いるのかいないのかも知りません。でも、小さい頃だったらまだしも、大人になってからの関係なら、無理につながる必要もないでしょう。それを無理強いしないのも、大人になってからできた関係性だからかなって、今は思いますね」
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。