取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
株式会社ハルメクホールディングスは、「シニアの夫婦関係・パートナーに関する調査2023」を実施。(実施日:2023年9月21日~9月25日、有効回答数:50~79歳の全国の男女600名、インターネット調査)。夫婦関係の満足度を調査したところ、男性は70代が最も高く80.0%の満足度だった一方、女性では70代が最も低く58.0%と、22ポイントの差が見られた。また、女性50代でも満足度に対して「どちらともいえない(26%)」、「満足していない(14%)」を合せると40%と高い数字になっており、夫婦関係に不満を抱いている可能性があることがわかる。
今回お話を伺った由香さん(仮名・42歳)の両親はともに50代のときに離婚。離婚を言い出したのは母親からで、すでに社会人だった由香さんは反対することもなく、両親の意思を尊重した。
家族はバラバラで食事することが普通だった
由香さんは兵庫県出身で、両親との3人暮らし。小さい頃に覚えているのは、父親に甘える母親の様子と、いつも一緒に遊んでくれていた父親の姿。家族仲は良かったと振り返る。
「父親のほうが母親よりも6歳上で、母親のほうが父親への愛は強い感じでした。私が父親と仲良くしていると『お母さんも入れて』といつも間に入ってきていましたね。
父親は毎日仕事終わりには直帰するような真面目なタイプで、友人と遊びに行ったりする様子は見たことがありません。お酒は少し飲むだけで肌が真っ赤になり、少しアトピー性皮膚炎を患っていて、お酒を飲むと痒みが酷くなるから苦手だと言っていました。一方の母親はお酒が好きだったこともあって、父はお茶で母親の晩酌にいつも付き合っていました」
中学、高校時代は由香さんと母親との仲が悪くなり、家族団らんはなくなっていった。3人で揃うことがなかったことから、両親の仲がどうなっているかなど気にもしていなかったという。
「親と一緒にいるよりも彼氏や友だちと遊ぶほうが楽しかったし、家に帰ると小言ばかり言う母親があのときは大嫌いでした。だから顔を合せないように、用意してくれていたご飯もお盆に乗せて自分の部屋で食べていましたね。母親に会いたくなくて自室に籠っていたので、両親が2人のときにどうしていたかなんてまったく知りませんでした」
大学時代には母親との仲は普通に戻ったが、家族3人が揃うことはなかった。母親が働き始め、家に帰って来る時間が不規則になったからだ。
「ご飯は朝に作って置いてくれることもありましたが、ない場合はそれぞれが自分の分を買って食べるという感じでした。母親がいないからといって父親と2人でご飯を食べようとは思いませんでした。別に父とは仲が悪かったわけではないけれど、2人で食べる必要はないかなと。私も彼や友人と食べて帰ることも多かったし、そちらを優先していました。父親はいつも家でご飯を食べていたみたいです。父のお茶碗だけが洗い物でありましたから」
【両親が離婚するときに初めて父親の携帯番号を知った。次ページに続きます】