取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
低所得のひとり親家庭への食品支援事業「グッドごはん」を運営している認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」を実施。(実施日:2024年2月2日~2月18日、有効回答数:2391名、インターネット調査)。アンケート調査にて就労のみによる2023年の年収(手取り)を調査したところ、「1円以上100万円未満」が25.1%、「100万円以上200万円未満」が43.4%など、就労収入の低い世帯が大きな割合を占めていることが明らかとなった。さらに、就労形態については回答者の半数以上が非正規雇用で就労していることがわかった(2023年末時点)。
今回お話を伺った有香さん(仮名・43歳)は、20代のときに結婚と離婚を経験して、現在は2人目の夫と、元夫との間にできた連れ子との3人暮らしをしている。最初の結婚は妊娠がきっかけであり、出産後すぐの離婚となったことで一時貧困に悩まされていたという。
出産してすぐに離婚
有香さんは滋賀県出身で、両親と1歳下に妹のいる4人暮らし。学生時代は年子だった妹との仲が悪く、「妹のことは大嫌いだった」と振り返る。
「1歳違いで体格が妹のほうがよくて、叩き合いみたいなケンカをすると私のほうがいつも負けていました。だから、姉としてのプライドもズタボロで、妹のことは“消えてくれ”っていつも思っていました。
中学に上がって直接的なケンカはなくなったものの、勉強は私のほうがまだできたけど容姿は妹のほうがかわいくて、周囲から『かわいくないほうがお姉ちゃん』とよく言われていました。隣に並びたくなくて、無視するという関係が私が上京するまで続きましたね」
有香さんは高校を卒業後に美容学校に進み、美容院への就職で上京する。勤め先の2つ上の先輩と恋愛関係になり、24歳から同棲、そして27歳のときに妊娠が発覚して入籍することになる。
「上京は都内の別の美容院への就職が決まっていた女友達と一緒にして、同棲するまでその子とルームシェアをしていました。だから、今まで1人暮らしをしたことはありません。
妊娠が発覚したときに最初に思ったのは、“どうしよう”でした。堕胎することは考えたくないけれど、結婚してもうまくいくわけないと思っていました。その頃にはすでに同棲相手との関係は悪化していたからです」
妊娠を同棲相手に告げたところ、「結婚しよう」と一言だけ返ってきた。その一言であっさりと結婚が決まる。しかし、有香さんの予想通りに妊娠中はケンカが増えて関係はさらに悪化。出産後にも関係は修復することなく、子どもに興味を示さない姿に「もう離婚しかない」と思ったという。
「妊娠して、お互い結婚できない事情もなく、付き合いも長いとなれば結婚しか選択肢がないと思っていました。たとえ関係が悪かったとしても、子どもがきっかけで修復するという期待もあったんです。
でも、無駄でした。私は妊娠中の体調不良で美容師という立ちっぱなしの仕事ができなくなり、仕事を辞めて休養していたんですが、夫は一切寄り添ってくれず邪魔者扱いをされることもありました。私も情緒不安定になり、不満を相手の顔を見る度にぶつけていました。
離婚は話し合いで決まりました。『一緒の空間にいるのがつらい』と私のほうから言ってしまい、『お金さえ払えば離婚しても問題ないでしょ』と言われましたね。あのときは本当に夫が憎かったです」
【子どもとの生活は家族が支えてくれた。次ページに続きます】