通院をキッカケに初めて客観的に見ることができた親の愛情。離れて過ごす時間が必要だった
就職してからも実家から通い、親の歪んだ愛情を受け続けていた麻友さんでしたが、仕事を始めて1年ほどの時期に突然倒れてしまったそう。
「就職先は電鉄会社で、その会社は家から通える距離にしか配属されないので、実家から通うしかなくて、他の選択肢はありませんでした。
倒れたのは本当に突然、結果的にはメンタルだったんですが、当初は私だけではなく、両親もビックリしていましたね。原因が不明だったのでしばらく休職扱いとなり、正式な診断が出た時に、そのまま退職することになりました」
休職期間に、麻友さんはある行動を起こします。その時、やっと両親との距離感がおかしかったことに気づいたと言います。
「病院に通って、カウンセリングを受けていく間で、私のメンタルの原因が親との関係性が大きく関わっていることがわかったんです。その診断を受けた時、最初はパニックになってしまって、20歳になって数か月ぐらいの時に家を出ました。避難場所は高校の時から付き合っている男性のところです。彼とはそのまま21歳の時に籍を入れました。今振り返っても、彼の存在が唯一の救いだった気がします。そこから4年ほど両親と直接話をすることさえできなくなっていたんですが、その間彼がずっと間に立ってくれて、私の思っていることを両親に伝え続けてくれました。そして、それをきっかけに初めて父親が私に『申し訳なかった』っと言ってくれたんです」
現在子供にも恵まれたことで、当時の親の気持ちが別の角度から理解できるようになったそうで、「私の中で親は絶対的な存在だった。その分、両親もひとりの人間なんだと、理解しようという気持ちは持てていませんでした。今自分も親になって初めて、子供が理解してくれないことを伝え続ける難しさと対面しています。親としてはまだまだ半人前。両親のこともそう認めてあげるだけでよかったのかもしれません」と語ります。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。