流産を経験。二度とこんな思いをしたくないと妊娠を怖がった気持ちを戻してくれたのは家族とのキャンプだった

唯さんは学生時代から付き合っていた男性と28歳の時に結婚。結婚して程なく、妊娠が発覚します。

「両親や兄、祖父母まで家族みんなが喜んでくれました。結婚して妊娠が発覚した頃は、個人でデザインを受け持つような仕事を、私の実家から徒歩圏内のところに構えた新居でしていました。自宅で休み休みだから、体を気遣って無理なく続けていけると思っていたんです。

でも最初からつわりはひどく、さらには感情が不安定になり、些細なことで周りにあたるようになってしまって……。妊娠中が一番家族との距離感がわからなくなりましたね。私は学生時代に反抗期などなく、両親とはずっと仲良しだったし、旦那とも一度もケンカしたことがなかったから」

家に居たくないという思いがあった唯さんは近所のマンガ喫茶などで仕事を行なっていたそう。しかし無理がたたり、妊娠3か月の時期に破水。破水は大量の出血をともない、流産してしまったと言います。

「なんの兆候もなく、まるでお漏らしをしてしまったと焦ってしまったほど、お腹が重かったといった症状は何もなくて。でも、そこには大量の出血があって。すぐに病院に行き、入院することになったんですが、結果はダメでした。赤ちゃんはいなくなりました……。そこからは後悔の日々です。なんでもっと安静にしとかなかったんだ、なんで出かけてしまったんだって。

そんな中、私の体調が戻った頃に、私の家族と旦那さんでキャンプに行ったんです。特に何かを話すことはなかったけど、寄り添ってくれる優しさをとても感じました。それに子供の頃を思い出せて、私ももう一度家族を増やしたいって思えるようになりましたね。それまではこんな辛い思いをするなら二度と経験したくないと思ってしまっていた気持ちを元に戻してくれました」

その後唯さんは再度妊娠。妊娠中は仕事を休み、自宅でゆっくり過ごしていたそう。

「2度目の妊娠の時はみんなが過度に心配してしまって、私の両親が週3~4ぐらいのペースで泊まりに来ていました(苦笑)。旦那さんが居心地悪かっただろうな(苦笑)。無事に子供を生むことができた時、本当に嬉しかったし、両親が私に抱いていた思いなんかがなんとなくわかるようになったというか。子供って自分が想像した以上に大切な存在なんだなって」

最後に甥っ子ができたお兄さんの態度に変化はあったかを聞いてみると、「私の父、おじいちゃんと張り合うぐらいにデレデレです。兄のお店には私の子供の写真が飾ってあるんです。知らないお客さんにはきっと兄の子供だと思われているんじゃないかな」と笑顔で語ります。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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