取材・文/ふじのあやこ

【娘の気持ち】兄の失業に、自身の流産。2度の辛い場面を乗り越えられたのは、一度は遠ざけた両親からの愛情だった~その2~

家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、小学生の子供を育てながら、お兄さんの経営する飲食店の手伝いをしている唯さん(仮名・39歳)。京都府出身で、両親と6歳上に兄のいる4人家族。兄は唯さんが就職したのと同じ時期に飲食店を友人と立ち上げ、店長をしています。そのお店は家族のたまり場となっていて。

「病気をしたことで、私は仕事をセーブするようになり、その分、兄のお店に入り浸るようになりましたね。それに両親も私もお酒が大好きだったから、何かあると兄のお店でご飯を食べるようになっていました。最初は兄も来過ぎだとツッコんでいたんですが、最後のほうには諦めたのか何も言わなくなっていましたね(苦笑)」

兄のお店が経営難で閉店に。もう一度お店をやりたいと思わせてくれたのは父の行動力だった

お兄さんのお店はオープン後2年経ち、外から見ると軌道に乗っているように見えたそう。しかし内情は厳しいもので、3年をまたずに閉店に追い込まれます。

「私からしたら本当に急に、兄のお店がなくなりました。私がお店に行く時にはお客さんはいたし、忙しそうに見えていたのに。閉店したことにより、いくらか私は知りませんが、数百万の借金もできたようでした。でも、兄は私の前では気丈に、ずっと前向きだったんです。6コも下だと頼りにもしてもらえないのかと悲しくなりましたね。その後、兄は友人を頼って別のお店で働き始めたので、すっかり元気になったと思っていたんです。でも……」

借金も少しずつ減っていき、表面上は元気だったお兄さんですが、いつまで経ってずっと同じお店で雇われている状態。もう一度やる気を起こさせてくれたのは父のある行動だったとか。

「兄の夢は昔からお店をやること。でも、一度の失敗から怖くなったのか、5年以上経って借金を返し終わった後もずっと同じお店で働いたままで。そのことに父も気づいていたみたいで、いきなりお店を出すと言い出し、会社を早期退職してきたんです!そしてそこの店長を兄にと。その思い切った行動力はさすがだなと。兄はその後押しにより、もう一度お店を始める決意をしてくれました。今は父はお店にまったく関与せず、たまにお店に行って大きな顔をしているだけだと兄が言っていました(笑)」

【次ページに続きます】

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