■STEP2:死を受け入れる

突然で避けられない死を突き付けられた後、飼い主さんはどうしたらよいのでしょう。まずは、死を受け入れ、次にペットの苦痛を取り除くためにどう対応するか、決めなければなりません。

最近は高度医療が発達して、人と同じような医療サービスを受けられる時代になりました。昔はできなかった治療が、今はできるようになっています。飼い主さんにとっては様々な選択肢が出てきて、いろいろな局面で決断を迫られるようになりました。

岡田さんによると、「治療のリスクは避けて通れませんが、飼い主さんの希望に沿って、最善の道を提案するようにしています。もし、病と徹底的に向き合いたいと言われたら、もちろん私もいっしょに戦います。最新技術など、二次診療と呼ばれる高度医療を望まれる場合は、そうした病院を紹介します」。

「高度医療サービスを受ける場合は、経済的負担なども含めて一緒に相談しながら、治療をしていきます。飼い主さんによっては、無理せず緩和ケアを望まれる方も増えており、そうしたケースでは、生活の質を落とさず、往診中心で、できるだけ家でできることをやっていきます」と言います。

緩和ケアでは自宅で飼い主さんが点滴をすることも。

■ペットの最善の死とは何か

どの道を行く時も、一番に考えるのは、『ペットにとっての最善の方法は何か』、だと岡田さんは言います。ペットにとって一番良い道、一番の幸せは、一緒に暮らしている飼い主さんが一番よく知っています。ですから、飼い主さんが選択する方法は、ほとんどの場合、ペットにとっても最善の方法でした。

「私達、ホームドクターは飼い主さんといっしょに、ペットが幸せに旅立つ準備を考えます。『亡くなったけど手術をしてよかった』あるいは『亡くなったけど、手術をしないでよかった』と思えるようにしていきます。できるだけ納得した上での死への旅立ちで、死後、飼い主さんの悲しみが少なくなる方法を探ります。信頼できる獣医さんと、日ごろからいろいろコミュニケーションをとっておくことも、大事な終活のひとつと言えるかもしれません」と岡田さん。

■ペットロスも学術的に分析されている

ペットの死は辛く、悲しく、自分の伴侶や子供など人の家族を亡くすのと同じか、それ以上の苦しみです。

無条件にすべてを受け入れてくれたペットを亡くした後、飼い主さんは自分が選んできた決断に対する後悔の念が湧いてきて、自責の念で苦しさが増してしまいます。米国ではペットロスの研究が進んでいますが、こうした罪悪感が死後に発生する時期があることが、研究により明らかになっています。

これまでぼんやりとしか考えていなかった、ペットの死。最後に、今回、会話を再現させて頂いた飼い主さん宅のペットは、虹の橋を渡ってしまいました。虹のふもとで遊びながら、飼い主さんと再び会う日を、心待ちにしているに違いありません。

取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

写真/木村圭司

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