取材・文/柿川鮎子
街のイルミネーションがクリスマス仕様になってきました。そろそろ楽しいクリスマスの用意をしている飼い主さんも多いでしょう。お客様を招いてのクリスマスパーティや、ご家庭で普段とは違うクリスマスを楽しむ季節でもあります。
大切な家族の一員でもある愛犬にもクリスマスを楽しく過ごしてもらいたい。そんな飼い主さんにクリスマスの安全対策について、ひびき動物病院院長・岡田響先生にうかがいました。
獣医さんが勧める愛犬のクリスマスケーキ
せっかくなので家族と一緒にクリスマスケーキを楽しみたい! そんな飼い主さんに岡田先生はケーキに関するアドバイスをいただきました。
岡田先生 愛犬も一緒にケーキを楽しみたいという飼い主さんにまず気を付けて欲しい点は
1)ヒト用と愛犬用が別々であること
2)手作りの場合は食材を厳選してなるべく食材をシンプルにすること
3)一気に飲み込んでしまわないようにすること、食べられない飾りをつけないこと
4)カロリーオーバーになるのを認識しておくこと
5)愛犬がケーキを食べる姿を見守ること
です。それぞれについて説明していきます。
1)まずはヒト用と愛犬用が別々であること
これは事故防止の観点からです。
今まで食べたことがない、とびきり美味しい食べ物に出会ったら、誰でも魅了されて、また食べたくなってしまうでしょう。
愛犬だってそうした食に対する記憶を持っています。むしろ匂いや香りには、ヒトよりも、もっと敏感かもしれません。一度記憶したら似たものに興味がでて、悪さをしてまでも取りに行くようなことになる可能性があります。
人にとっても、砂糖、果糖、人工甘味料などの入ったお菓子は、中毒のように表現されることがあります。もしご自宅でケーキを習慣的に食べるなら、以前のことを愛犬は覚えていて食べられてしまうかもしれません。注意が必要です。
愛犬向けのクリスマスケーキキットも最近少しずつ増えていますが、なかでも写真のようなキットがおすすめです。ひと手間かかるとも言えますが、ココグルメのように、素材などがヒトの食材料とかぶらないのは好都合です。
2)手作りの場合は有害な食材ではなくてなるべくシンプルなこと
チョコレート、ブドウ、玉ねぎなど、愛犬にとって与えてはいけない食材を、進んで与える飼い主さんはいないはず。でも、シュトレンに干しブドウたっぷり入っているのを知らないで与えた、というケースは十分に考えられます。
食べられる安全な素材を調べると、いろいろ不安になってしまい、最終的には「ケーキは与えないほうがいい」という結論に達してしまうことも。
とはいえ、愛犬と一緒にクリスマスを楽しみたいという気持ちも理解できるので、手作りの場合、食材はなるべくシンプルにしたほうが安心です。無糖の無添加ヨーグルト、サツマイモ、カボチャ、ゆでたササミやキャベツといった、シンプルな野菜や肉を使って、手作りすることをお勧めします。
普段食べるドライフードとウエットフード一食分
ウエットフードは水切りしておくと整形しやすい
1.ウエットフードを水切りして、ドライフードはやや粗めに砕く。(砕かないと整形しにくい)
2.ラップを敷いてウエットフードを全体に敷き、ドライフードを粉にして中心にして巻く
3.整形できるまで1時間以上冷蔵庫に入れて固める
4.ササミはまるごと、キャベツは刻んでゆでる(塩は入れない)。あればサツマイモなどを蒸かしておく
5.飾りつけ
3)一気に食べられないようにすること、食べられない飾りをつけないこと
愛犬は、どんなに見た目が良くても、どんなに工夫していても、目の前に出されたケーキを目で味わうことなんてせず、あっという間に速攻で食べてしまいます。その中でケーキの上に乗せるお飾りや、分けるためのフォークやナイフを、一緒に食べてしまうことがよくあります。
せっかく美味しいケーキをいただいたのに、その日に手術というケースがありました。大切な愛犬にはそんな体験をさせないよう、注意してください。
ジャーキーや歯磨きガムなどのような固い食材や、リンゴなどのフルーツでも、丸呑みしてしまうと喉や食道で引っ掛かってトラブルになることがあります。
美味しい! うれしい! となると普段より食べる勢いが増すのは容易に想像できます。いくら「ゆっくり食べようね」と言っても、あまり効果が期待できませんので注意してください。
4)カロリーオーバーになるのを認識しておくこと
基本的に小さいケーキでも、愛犬の1食分のカロリーはラクに越えてしまうことを覚えておきましょう。
素材や調理法によってカロリーは変動しますが、どう工夫してもクリスマスケーキを食べるとカロリーオーバーになるケースがほとんどです。ケーキの前に、通常の食事を与えていたら、食事をもう一食、余計に食べていることになります。
ケーキを食べた翌日に食べ過ぎからおなかを壊してしまうことも少なくありません。これから年末の時期は、クリスマスやお正月があり、過食による消化器のトラブルは「動物病院あるある」です。
ケーキを与える場合は、「ケーキも前後の食事も量を調整しないといけない」と思ってください。肥満から来る怖い病気については以前「【獣医さんに聞く】ペットのコロナ太り対策5つのポイント(https://serai.jp/living/1003557)」でも紹介しています。
食事制限をしている愛犬の場合は、ケーキの量や食材の種類によってはケーキが強力な毒に変化してしまうことがあります。せっかく普段の治療を頑張っていても、クリスマスだからとケーキを与えた結果、病気にさせてしまっては誰もハッピーになれません。
特に治療中の子の場合は、主治医の先生に一言相談するほうがいい場合があります。ケーキなどはどのくらいの危険度があるのかを確認したら、大丈夫な量よりも少なめにしておくほうがいいでしょう。
美味しく食べたら後は楽しく身体を動かす運動も。散歩の時間も少しだけ長くして、歩く距離を伸ばすことをおすすめします。
5)愛犬がケーキを食べる姿を見守ること
できれば愛犬が食べる姿を見守ってあげてください。写真を撮ったりしてもいいと思います。シートや食べられないお皿をかじったり、のどに詰まらせていないかを、最後まで油断しないように観察してください。
コロナ禍が続き、何となく不安な空気はあっても、愛犬と過ごすクリスマスは格別です。愛犬と過ごすクリスマスの思い出は、飼い主さんにとってかけがえのない記憶として残ることでしょう。私も愛犬と楽しい時間を過ごして欲しいと思っているので、一緒にケーキを食べられるのならば思いっきり楽しんで欲しいです。
ご家庭でケーキを食べるだけでなく、最近は愛犬同伴の撮影会や食事会など、いろいろなイベントも少しずつ開催されるようになっています。ケーキやお出かけなどで、思いっきりクリスマスを堪能してください。
美味しく食べて、楽しくクリスマスを過ごすためにも、愛犬の事故を予防する意識を持ちましょう。最後に、注意してほしい食材を紹介します。
・ヒト用ケーキのドライフルーツ(レーズンなど)
・チョコレートやココアパウダー
・玉ねぎ入りハンバーグ
・焼き鳥やおでんなどの串もの
・クリスマスの骨付きチキン
・キシリトール入りガム
・子供が与えそうなお菓子
です。
飼い主さんにコロナ禍のクリスマスのアドバイス
岡田先生 新型コロナウイルス第8波の流行が来ています。いつも言いますが、ペットは飼い主さん家族の生活が成り立たないと生活を送れなくなってしまいます。今年はインフルエンザとのダブル流行などと言われていますから、飼い主さん家族の健康維持が大事かと思います。
これらの病気を愛犬にうつすリスクはとても少ないと思いますが、万が一家族が感染者や濃厚接触者などになった場合には外出ができなくなります。人の食糧は補助されることがあってもペットの食糧は自分で用意しないといけません。ペットフードやトイレ関係のストックなどは、今から備えておいてください。
円安でペットフードの値段も値上げが続いています。最低限の購入にしておきたいところですが、外国のロックダウンなどの様々な事情によりペットフードの輸入遅延(製品や原材料のどちらも)なども続いている状況です。
世界的なコロナの状況次第では、ペットフードが買えなくなってしまう可能性がありますので、必要なものはいくらか余分にストックすることをおすすめします。
今年のクリスマスは愛犬とともに、思い出に残る楽しい時間をお過ごしください。
取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
ひびき動物病院
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/
取材・文/柿川鮎子 明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。
ココグルメ
新鮮な素材をそのままに冷凍配送でお届けする、獣医師監修の手作りドッグフードを提供。2022年のクリスマスキットは11月末で販売終了。
ココグルメ https://coco-gourmet.com/
クリスマスセット https://coco-gourmet.com/cart/campaign/xmaskit_2022