取材・文/柿川鮎子

寒い時期に気を付けたい愛犬の病気や快適な生活環境づくり、そして寒い時期の散歩について、ワンダーランド診療所 by アニホックの院長で獣医師の遠藤伸子先生に教えていただきました。

寒くなる時期は泌尿器系の病気に注意

寒くなると飲水量が減って、尿石症や尿路結石症と呼ばれる病気になりやすい傾向があります。特に冬に多くなる病気のひとつです。

尿石症は尿に含まれるミネラル成分が結晶化して、膀胱、腎臓、尿道など泌尿器部分で結石となる病気です。症状として血尿や膀胱炎、悪化すると尿道閉塞となり、命にかかわることもあります。

尿石はたまる石の種類で異なり、ストラバイト尿石やシュウ酸カルシウム尿石などが代表的です。尿中の酸性度によって、結晶化する成分が異なります。通常、尿は中性から弱酸性ですが、アルカリ性や酸性に傾くと結晶化が進んでしまいます。

結石や結晶はその成分によって療法食で溶解できるものとできないものがあります。尿石は体質的になりやすい子も多く、そうした子には、飲水だけでなく、尿石ができないようにする療法食などのフードをつかって、予防することも可能です。

常に新鮮なお水を身近に置いて病気予防を

冬は飲水を増やすために、常に新鮮なお水を身近に置いてあげることを心掛けてください。すぐに飲みに行ける場所であれば置くのはどこでも構いません。冬場は寒い場所に行きたがらない子も多いので、適温の場所を選んで水を置いてあげてください。

与えるお水は水道水です。ミネラルウオーターはマグネシウムなど結晶を作りやすい成分が含まれているので、絶対に与えないようにしてください。

また、高齢の子など、どうしても飲水量が減ってしまう場合は、ドライフードに水を入れてふやかしてあげたり、水分量の多い缶詰のフードを与えるようにしてください。

長時間、膀胱に尿が溜まると結石になるリスクが増えてしまうので、可能なら1日2回以上トイレできるように。散歩でしかトイレができない子であれば、可能なら2回以上は散歩に行ってあげてください。

また、愛犬が排尿姿勢をとっているのにおしっこが出ていないときや、24時間以上おしっこがでていないときには尿道に石が詰まっている可能性もあるので、早めに動物病院を受診してください。

寒い時期は愛犬の肉球ケアも

寒い時期の早朝は、地面が凍っていたりと、肉球にダメージを与えることもあります。普段、家の中の暖かい場所で過ごす時間が多い子を急に凍った道路や公園に連れ出すと、肉球が傷ついてしまうことがあります。犬用の肉球ケア対策用品がいろいろ販売されているので、試してみてください。舐めても安心な肉球を保護するクリームなど、その子に合ったものを試してみるのも良いでしょう。

最近は愛犬に靴を履かせている人もいますが、嫌がらなければ良いと思います。ただし、普段から履いていて、慣れている場合だけです。寒くなったからといって、急に履かせると嫌がったり、滑ってけがをしてしまうことも多いので、少しずつ家の中で慣らすなど、準備しておくと良いでしょう。

暖房ではエアコンの設定温度を過信しないこと

最近はエアコンを使った保温対策を行っている飼い主さんがほとんどで、部屋全体が温かく、愛犬にとっても快適な環境で過ごされていると思います。愛犬のいる部屋の設定温度は20~24度ぐらいが適温です。エアコンを20度に設定しても、人より床に近い場所で生活しているので20度には保たれず、寒さを感じてしまっている可能性も。温かい敷マットやペットヒーターなどで足元を温めて、体温を保てるようにしてあげましょう。

ヒーターを使う場合は、暑さを感じたら愛犬がその場から逃れられるようにしておくことが大切です。ケージの中であっても、必ず逃げ場をつくってあげてください。

ストーブや温風ファンヒーターなどは直接熱が伝わるので、やけどや皮膚の乾燥にも注意してあげてください。加湿器などを使って、温めるだけでなく、適切な湿度を保つことも大切です。乾燥しすぎるとセキが出たり、気管支炎を引き起こす場合もあります。

冬に大切な肥満対策

寒くてもできるだけ普段と同じように、散歩をさせてください。しかし、どうしても寒さが苦手な子もいるでしょう。特に短毛種のチワワやイタグレ、パグなどは特に寒さが苦手な犬種です。

散歩をせず、家の中でも運動を活発にできないと、肥満になってしまいます。どうしてもカロリーオーバーになりそうな場合は、ご飯を少し減らすのも良い方法です。

肥満は単に体重が増えるというだけではなく、肥満が原因の病気を引き起こすことにもつながります。糖尿病や免疫力の低下による感染症、関節炎などの骨関節疾患や心血管疾患といった命にかかわる怖い病気の原因となるので、冬は特に体重増加に注意してあげてください。

散歩中や家庭内の事故に注意

冬の散歩の事故にも注意が必要です。朝や夕方、暗くなると、老犬は目が見えにくくなり、衝突や転落、道路に置かれた障害物との接触事故などが増えてしまいます。なるべく明るい時間に散歩をして、飼い主さんは目を離さないようにしてください。

また、これから冬に向けて、クリスマス、お正月といった人が多く集まるイベントが増えます。いつも家で家族と過ごしている愛犬にとっては、知らない人が来るなど慣れないことも多く、ストレスがたまる時期でもあります。下痢をしたり、ストレスによる体の不調を引き起こすケースも多いので、気になる症状が見られたらすぐにかかりつけの動物病院に相談してみてください。

ペットホテルに預けた後に具合が悪くなったり、家に来た子供が愛犬の身体に良くない食べ物を与える事故も多くなります。特に正月明けにはそうした事故で病院に駆け込んでくる飼い主さんが増えるので、注意してあげてください。

気象庁の予報によると、今年の冬は例年並みかそれより低いそうです。今年の冬も愛犬と健康で快適に過ごせるよう、願っています。

院長 遠藤伸子先生

1997年麻布大学卒業。
2022年よりワンダーランド診療所 by アニホック勤務、院長に就任。
ワンダーランド診療所 by アニホック
東京都練馬区大泉町5丁目6−51 スーパーバリュー内
病院URL:https://anihoc.com/hospitals/wonderland/

取材・文/柿川鮎子 明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

 

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