取材・文/柿川鮎子 撮影/木村圭司
夏本番を前に、ペットの熱中症対策に関して、飼い主さんが犯しがちな5つの間違いを、ひびき動物病院院長岡田響さんに教えていただきました。犬や猫を大切に飼育し、可愛がっている人であっても、意外と誤解されているケースの多いものばかりです。
■間違いその1 犬や猫は暑さに強い動物だと思っている
ほとんどの生き物は、寒さよりも暑さに弱い身体の仕組みをもっています。特に犬や猫は全身を毛皮で覆われており、さらに人間とは違って大量に汗をかいて放熱することができないため、熱が体内に蓄積されやすくなります。
人間ならば、夏でも毛皮を着ている感覚です。ただでさえ体温上昇しやすい一方、下げるのも大変です。体温を下げるためには、呼吸で熱い息を外に出したり、冷たい場所への熱伝導など、汗以外の方法で放熱する必要があります。
さらに、人間よりも生活する場所が低く、より地面に近い位置にいます。真夏の直射日光を浴びて、熱い地面からの反射熱にさらされ、人間より熱の影響をより強く受けます。岡田先生は「飼い主さんは何となく『犬や猫は人より暑さに強い動物だ』と思っていらっしゃるようですが、そんなことはありません。ペットは人より暑さに弱いものだ、という認識をもっていただきたい」と言います。
■間違いその2 熱中症は屋外にいる時だけ注意する
熱中症は保険請求の件数も多い事例なのでしょう。ペット保険会社各社のホームページには、熱中症についての調査報告が掲載されています。興味深いのは、熱中症が発生した場所について。アニコムの調査では、リビング:ドッグラン:その他=44:48:8、という割合でした。アイペットやアクサダイレクトの調査では、熱中症の発生が、1位)家の中で普通に過ごしている時、2位)家の中で留守番中、3位)お散歩中、です。熱中症が自宅の室内で発生している事例は想像以上に多いのです。
調査している年で多少の増減はありますが、だいたい6割近くが室内で熱中症を発症させています。さらにそのうちの6割は、家族も家にいた時に発症してしまうのです。間違いその1でも説明しましたが、人が平気な暑さであっても、ペットにとっては危険な場合もある、ということなのです。
岡田先生は「暑い日の屋外での運動は、緊急性が高い熱中症の危険因子となります。家でも外でも、厳しい暑さの日は、ペットの熱中症に気を付けるべきです」と教えてくれました。
■間違いその3 ペットだけの場合、留守中や就寝中はエアコンを切る
飼い主さんが昼間、仕事や用事で留守にする時は、室内のエアコンを消すことも多いはず。
また、夜間もエアコンなしで就寝する人は多いのですが、スイッチを切れば室内の温度は上昇します。とはいえ、エアコンの冷気が直接ペットの体に当たる場所に長時間いるのも、問題です。冷え過ぎにも注意しましょう。
「真夏日など30度を超える日は、ペットがいる部屋はエアコンをつけてください。風通しの良い室内が理想ですが、防犯上、窓を開けっぱなしにしておくこともできません。
今年もすでに5月の運動会で子供たちが熱中症で病院搬送されたという報道が多く、高齢者の熱中症による救急搬送も今月に入って増えてきています。家族がいない時でも、夜でも、猛暑日はエアコンを24時間つけっぱなしにしておく方が安心ですよ」(岡田先生)。
特に高温に注意したいのは、身体の体温調整機能が衰えている高齢の犬や猫。また、フレンチブルやパグなど鼻の短い種類は暑さの苦手な犬種です。脂肪に覆われて熱のこもりやすくなっている肥満のペットや、慢性的な病気をかかえている子も、熱中症の危険が高まります。
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