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暮らし

【娘のきもち】病気の母親は娘の帰郷を喜んではくれなかった。大学中退後、久々に会話をした親娘は……~その2~

取材・文/ふじのあやこ

家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、広島県にある企業で事務の仕事をしている誠子さん(仮名・35歳)。広島県の出身で、両親と5歳下の妹がいる4人家族。演劇の道に進むため、大学を2年生の時に退学しました。紹介してもらい入った劇団では最初は裏方などの仕事がほとんどだったと言います。

「最初は劇団を見に行った時にフライヤーを大量に持って帰って、劇団を調べたりしていましたね。入ったところは知人の劇団を紹介してもらったところでした。面接と歌の個人オーディションを経て、入団することができました。

そこはマンションの一室みたいなところに事務所があって、人数は10人前後。最初は研究生みたいなポジションだったので、裏方として舞台衣装を古着屋さんで探したり、チケットのもぎりやフライヤー作りを手伝ったりしていました。練習は週に1~2度なんですが、裏方の仕事などで週4以上は通っていましたね」

反対されないものの、認めてくれていない両親。自分の顔が載ったフライヤーも喜んではくれなかった

演劇の仕事がない時の時間はすべてアルバイトをしていて、大学在学中と同じように実家に帰省することはなかったそう。両親は学校を退学したことを認めてはくれたものの、大学在学中よりも連絡は減っていたと誠子さんは語ります。

「在学中もたまに母親からメールはあったんです。『ちゃんとご飯を食べていますか?』みたいな簡単なものでしたけど。でも、退学してからはほとんどなくなりましたね。父親や妹とは元々連絡を取っていなかったので、母親からの連絡がほとんど来なくなったことで家族のことを思い出すこともなくなっていきました。毎日アルバイトとレッスンをこなすだけで精一杯でしたから」

1年後には研究生から役者に昇格。さらに1年後にはある程度のセリフがある役を任されるようになります。フライヤーに自分の顔写真が載った時はすごく嬉しかったそうです。

「フライヤーに名前は掲載されますが、顔写真はスペースの問題もあり、主役の人とその脇を固める主要の人たちしか載りません。小さくだけど、自分の写真を見た時、やっと形を残せたなって思いました。

同じ時期に住んでいたマンションが壊されることになり、引っ越したんです。保証人のところに親の直筆が必要だったので、書類を送るついでにそのフライヤーも入れてみました。結果は何の反応もなく、記載済みの書類だけ返ってきただけでしたね」

母親のガンが発覚。実家に戻った私を母親は責めてきた。その気持ちを救ってくれたのは父親の言葉だった

演劇を始めて8年が過ぎ、その間で帰省したのはわずかに数回。それは大型連休ではなく、親族の葬儀などでした。そんな時に、妹から電話がかかってきたそう。数年ぶりに聞く妹の声は震えていたと言います。

「母親にガンが見つかり、手術するというものでした。母親は自宅で仕事をしていたので、健康診断をずっと受けていなかったようで、病状は初期ではありませんでした。『お母さん死んじゃったらどうしよう』と震える妹の声を聞いて、すぐに帰らなければって思いました。

劇団とアルバイト先に状況を伝えて、翌日には実家に戻ったんです。帰ってみると母親はすごく痩せていましたね……。私は知らなかったんですが、すでにピアノ教室はやっていませんでした。今まで帰省時には葬儀などで施設に泊まることがほとんどだったので実家に入ったのもひさびさ。久しぶりに会う娘に対して母親は喜んでくれましたが、やっぱりカラ元気という感じでした」

手術は無事に成功。10日ほどで退院できたそうですが、その後経口タイプの抗がん剤治療が始まりました。副作用はそこまで強いものではなかったとのことですが、数年と続く治療を考え、誠子さんは実家に戻ることを決めます。

「一回帰省して、その後手術でも再度帰りました。そして入院中は妹と交代でずっと母親に付き添っていました。退院後には京都に戻ったんです。でも、やっぱり気になるんですよね。父親は気丈に振る舞っていましたが、妹は私が京都に戻ることを告げる度に不安そうな顔をしていて。京都にいる時に色々考えて、実家に戻ることを決めました。1か月後には実家に戻り、就職先も父親の紹介で見つけることができました。

いざ実家で生活を始めると、母親からは『私のせいで』と謝られることが多く、『大丈夫だったのになぜ帰ってきたのか』と責められることもありました。病院では月に一度経過観察が行われていて、気持ちが疲弊しているせいもあったんだと思います。私から責めてはいけないと思いながらもやりきれない気持ちの時ももちろんありました。でも、父親と妹から『ありがとう』って言ってもらえたことで救われた気持ちになれましたね」

誠子さんの母親は再発も転移なく、無事5年というひとつの節目「寛解」を過ぎることができたそう。今は妹が嫁いだことでOLをしながら実家に3人暮らしを続けています。そんな誠子さんに演劇の道に未練はないのか聞いたところ、「ないです。自分で決めたことですから。ずっと演劇をやっていることを両親に認められていない気がしていたんです。でも、以前送ったフライヤーがアルバムに挟まっていて。ラミネート加工なんかされていて、とても大切にしてくれていたんだなって思うと、いい思い出にすることができましたから」と笑顔で語っていました。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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