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【娘のきもち】「お姉ちゃんでしょ」と厳しく躾けられた学生時代。いつからか家族団らんに私はいなかった~その1~

取材・文/ふじのあやこ

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「私は実家に戻ることを自分で決めたのに、母親からの『ごめんなさい』という言葉がずっと離れませんでした」と語るのは、誠子さん(仮名・35歳)。彼女は現在、広島県にある企業で事務の仕事をしています。胸元が大きく開いたベージュのVネックのニットに、黒のタイトスカートを合わせています。黒目がちの瞳や色白できめ細かい肌など、女性らしい雰囲気を持ったとても綺麗な女性です。

母親から言われ続けた「お姉ちゃんなんだから」。お姉ちゃんになりたくてなったわけじゃないと反抗的な態度を取り続けてしまい

誠子さんは広島県の出身で、両親と5歳下の妹がいる4人家族。父親は自動車メーカーの営業の仕事をしており、母親は自宅でピアノ教室をやっていたと言います。

「小さい頃の記憶として残っているのは、とにかく母親が厳しかったこと。私と妹も母親にピアノを習っていたんですが、毎日の練習は義務でしたね。教室が終わるのが大体18時とか19時ごろで、その後にレッスンが始まるんです。よその子には優しい先生で通っていたようですが、私たちには厳しくて。何度か同じ小節で詰まると、その箇所を何十回もやり直しさせられていました……」

母親のレッスンは父親が帰宅後に行われていることも多く、厳しく叱られた後には父親はよくお菓子をくれながら慰めてくれていたそうです。

「父親はよく私たちの部屋に遊びに来て、決まってお菓子をくれました。お菓子はキャラクターものの小さなガムや飴などなんですが、お菓子を見たとたんに気持ちがパッと明るくなるんですよ。その時の父親の言葉はまったく覚えていないんですが、お菓子のことだけはハッキリと今も覚えています(笑)」

勉強や、日頃の行いなどを厳しく注意されていたのもすべて母親から。姉妹の仲は良かったものの、ケンカのたびに浴びせられる言葉にしんどさを感じることもあったとか。中学生になり、反抗期を迎えた時には妹ともギクシャクしていました。

「『お姉ちゃんなんだから』という言葉で、ほとんどのものが妹の方が優遇され続ける。妹は親に甘えることが許されるのに、私は『自分で決めなさい』『しっかりしなさい』と言われることばかりで……。私のマンガを破られても、服を勝手に着られて汚されても、ケンカになって母親から制されるのは私。そんな気持ちでいると、妹のこともどんどんかわいくなくなってくるんです。

怒られたくないから妹と会話しない、母親はうるさいから会話しない。家で孤立してくるようになりましたね」

京都で友人に誘われて興味を持った演劇の道。大学を自主退学してその道を志すことに

高校受験を名目にピアノのレッスンを辞めてしまったという誠子さん。高校に進学後は同じ学校に彼氏もでき、アルバイトも始めたことにより、家に帰るのはいつも父親よりも遅くなっていきます。

「バイト先の飲食店で晩御飯のまかないをもらうようになっていき、晩御飯を一緒に食べなくなりました。何度もいらないと言い続けたら用意されていることもなくなってきて……。

高校時代は家族で出かけた記憶もないですね。思い出すのは友達のことや彼氏のことばかり。アルバイトをしたことで自由に使えるお金も増えて、朝までカラオケオールとかをよくしていました。朝帰りをすると次の日はずっと寝ているんですが、母親のピアノの音によくイライラしていたことを覚えています」

どうしても実家を出たい思いから、誠子さんは県外の大学を受験して、見事に合格。初めての一人暮らしは楽しく、同じ大学に通う生徒が多く住む地域だったこともあり毎日誰かといる生活だったと言います。そして大学2年の時に、友人に誘われてある劇団の舞台を見に行って演劇というものに興味を持ち始めます。

「京都の大学に進学して、同じアルバイト先の他校の人たちと仲良くなりました。その中の一人が芸術系の大学の演出や舞台関係の学部に入っていて、その人に勧められて色んな舞台を見に行くようになりました。そして、いつからか私も演者になりたいって思うようになったんです。

学校では経済や経営について学んでいたんですが、まったく意味がないものに思えてきました。当時2年生で、このままあと2年を無駄にしたくなかった。その思いを胸に一人暮らしをして初めて実家に帰省して、学校を辞めたいと言いました。両親とももちろん大反対でした。冬の休み期間中に説得を続けて、なんとか『2年分の学費を就職して返していくこと』で両親は折れてくれました。そして、学校を退学した後、知人の紹介である劇団のオーディションを受けて、入団することができたんです。当時は貧乏だったけど、一番楽しかったときでしたね」

劇団の活動とアルバイトで忙しい毎日。徐々に疎遠になっていく中、泣きながら電話をかけてきた妹からの言葉により、誠子さんの人生は一転します。

~その2~に続きます。】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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