■自慢のおヒゲに当たらない、かつ動く水がいいのにゃ!
今回のプチ実験の結果的には、シェルターにいる30匹の猫たちの間では4つの器の人気順位は(3)(2)(4)(1)となりました。
入交先生いわく、猫はがお皿に触るのを好みません。もしかしたら水に濡れるのも好まないかもしれません。そうなると、(4)のランクが下がってしまったのにも、ちょっと納得がいきます。(3)と(4)は水が動いているという点では共通していますが、(4)は水が落ちてくるので、水はねがあったりして猫はちょっと気になるのかもしれません。
(3)の場合、中央が盛り上がった構造になっており、猫のヒゲは決して水に濡れません。湧水の勢いは緩やかなので水はねもなく、絶えず動いている水でフレッシュ感はばっちりです。
そこでふと思ったのは、蛇口から直接水を飲みたがる猫ちゃんは、ひょっとしてフレッシュな水を飲みたいという以上に、飼い主さんとのコミュニケーションとして楽しんでいるのかもしれない、ということ。いわば、日課です。
実際、我が家の飼い猫の1匹は、筆者が洗面所に行くと待ち構えていて、蛇口から直接水を飲みたがります。もう1匹はというと、筆者が帰宅すると必ず台所のシンクの端に座って器に入れた水を要求します。どんな器でもいいようです。とにかく、筆者が手で持っている器から水を飲みたいのです。いずれも、それぞれの猫の日課なのです。
同じ置き水でも、(1)は大き目のステンレス、(2)はひとり独占タイプの陶器。この陶器での水飲み行動の一番の特徴は、とにかく飲んでいる時間が長い! ごくごく、という表現が正しいかわかりませんが、ずっと飲んでいるのです。猫のために開発された、水がおいしくなるといううたい文句は、間違いではないようです。
もっとも、陶器ならなんでもいいというわけではなさそうです。
「陶器製の器もいろいろあるかと思いますが、陶器によっては釉薬に鉛やカドミウムが含まれているものもあり、アレルギー症状を起こしてしまう猫ちゃんもいるので、気を付けた方がいいですね」と入交先生。
金属アレルギーは聞いたことがありますが、陶器アレルギーもあるんですね。プラスティックに反応してしまう猫ちゃんもいるようです。そうなってくると、もう何も使えない!と不安になってしまいます……。
どんな器であっても、使ってみてちょっとでも様子がおかしいと感じたら、病院でアレルギー検査をしてもらった方がいいかもしれません。
指導/入交眞巳(いりまじり・まみ)先生
動物行動学専門医。米国獣医行動学専門医。学術博士。米インディアナ州立パデュー大学で博士号取得。ジョージア州立大学獣医学部にて獣医行動学レジデント課程を修了。北里大学動物行動学研究室専任講師、日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科講師を経て、現在は日本ヒルズ・コルゲート株式会社に勤務。その傍ら、精力的に各地で動物行動学に関する講演を行なっている。
文/一乗谷かおり
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