【にゃんこサライ 第1回】
人間目線で愛猫のトイレを設置していませんか?
空前の猫ブームといわれる昨今。でも、猫の生活や行動パターンについては、意外と知られていないことが多いようです。人間や犬の行動に当てはめて考えて、まったく違う解釈をしてしまっていることも少なくありません。昔から猫を飼っているから、猫の性格や習性を熟知していると思っていても、じつは勘違いしていたということが結構あるようです。
そこで「にゃんこサライ」では、動物行動学の専門医・入交眞巳先生(日本獣医師生命科学大学)にお話を伺いながら、猫との暮らしで目の当たりにする行動や習性について、専門的な研究に基づいた猫の真相を解明していきたいと思います。
人間目線のトイレはイヤ!
私は大学の獣医学部で教える傍ら、ペットクリニックでも診察をしています。猫の飼い主さんからのS.O.S.で最も多いのが、「うちの子の粗相をなんとかしたい」というものです。
粗相、つまりトイレの悪い癖についてということなのですが、これ、猫について充分わかっている方でも、悩みの種のひとつとして「あるある!」と頷いてしまう向きも多いのではないでしょうか。
「どうして、うちの子は私の布団で排便をするのでしょうか」
「夜中にトイレに行くと、廊下に転がっている〈排便爆弾〉を踏んでしまうことがあります」
「うちの子はトイレで用を足す時、必ず器の枠外にしてしまいます」
「クッション、ソファー、布団、Yシャツ……、柔らかいものの上でする癖が治りません」
などなど、私のところには、飼い主さんたちの悲鳴が多く寄せられます。
ペットショップで購入した血統書付きのブランド猫でも、野良出身のミックスでも、粗相をしてしまう子はするし、しない子はしません。
では、粗相する子としない子の違いは、いったいどこにあるのでしょうか。
猫の粗相の原因を解明するには、それぞれの猫の生い立ちや現在の生活、家の中の構造、家族構成など、いろいろな要素を把握する必要があり、一概に「こうだ」と言い切れない面もあります。
でも、動物行動学の観点で、ひとつ提案できることがあります。それは、まずトイレの環境を見直してみよう、ということです。トイレの大きさや形、砂のタイプ、置き場所などを変えてみることで、改善が見込める可能性があります。
要するに、粗相をしてしまうあなたの飼い猫は、今のトイレ(の状態)をお気に召していないかもしれない、ということです。先ほどの「粗相する子としない子では、どこに違いがあるのか」という問いに対する答えのひとつは、トイレ環境に違いがある、ということになります。
次回は、猫の目線に立ったトイレ環境の具体的な改善方法を探ってみたいと思います。
《入交眞巳さん プロフィール》
日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、米国に学び、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。日本ではただひとり、アメリカ獣医行動学専門医の資格を持つ。北里大学獣医学部講師を経て、現在は日本獣医生命科学大学獣医学部で講師を勤める傍ら、同動物医療センターの行動診療科で診察をしている。
《わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)》
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻、父さんと母さん。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。