文・石川真禧照(自動車生活探険家)
アウトランダーは三菱自動車の中型SUV(スポーツ志向の多目的車)である。車名のPHEVは、充電機能を持つハイブリッドの電気自動車という意味。エンジンとモーターを併用するハイブリッド走行に加え、家庭や充電スタンドでモーターを駆動させる電池に専用プラグで充電できるのが特徴だ。
また、一般的なハイブリッド車のモーター走行距離は2〜3km程度だが、大容量の電池を搭載する同車は40〜60km近くモーターだけで走行できる。
アウトランダーPHEVは、通常はEV(電気自動車)走行だが、電池残量が少なくなるとエンジンが始動し、発電機となって充電しながらモーターに電力を供給する。急加速や高速走行など消費電力の大きい状況では、エンジンは発電と走行(駆動)の両方を担う。これが同車の大きな特徴である。
■エンジンも静粛性に優れる
充電や駆動に力を配分するエンジンの燃料消費量は非常に少ない。2リットルのガソリンエンジンは、音や振動がかなり抑えられており、加速時などの静粛性の高さは国産PHEVの中でも秀でている。
同車は、悪路や濡れた路面などでの走行安定性に優れた4輪駆動であることも大きな魅力である。前輪用と後輪用にモーターをふたつ備えており、コンピュータが走行状況を判断しながら駆動力を効率よく配分する。
三菱はかつて世界ラリー選手権に出場し、ランサーエボリューションなどの車種でスポーツ4輪駆動の技術を磨いていた。その経験を活かしながらモーターを使った新しい駆動方式を考案し、PHEVに実用化している。
最新のアウトランダーPHEVに試乗した。ほぼ満充電に近い状態で、計器盤にはモーター走行可能距離が58kmと表示されている。アクセルペダルを踏み込むとモーターは力強く駆動し、その加速力はガソリン車のV6・3ℓターボエンジンよりも鋭い。
走行中は回生ブレーキ(※)による充電量を6段階で調整でき、回生レベルを上げればエアコンを使用しても40km以上モーター走行が可能だ。高速走行時も充電量が多ければ、時速100kmでモーター走行できる。充電量が減ったら、充電モードスイッチを押し、エンジンを始動させて充電すればよい。その際、ガソリンを消費するが、エンジンは低い回転数を保つので燃料消費量は少ない。
走行状況を考えながら、モーターとエンジンを上手に使い分ける。そんなドライブを楽しめるのも、PHEVならではの魅力である。
同車は安全面でも進化している。カメラとレーザーレーダーによる歩行者検知機能が追加され、衝突回避性能が向上。斜め後方から近づく車両や後退時の車両検知警報システムを新たに採用し、駐車からの前進・後退時の誤発進抑制機能も用意する。
幅、奥行き、高さともに充分な広さの荷室。背もたれは6対4で前倒し、荷台とほぼ一体になる。100VのAC電源も備わる。
【今日のクルマ】
『アウトランダー PHEV Sエディション』/三菱
■全長×全幅×全高:4695×1800×1710mm
■ホイールベース:2670mm
■車両重量:1900kg
■エンジン/モーター:直列4気筒DOHC/1998㏄:永久磁石式同期型
■最高出力:118PS/4500rpm:前・後82P
■最大トルク:19.0㎏-m/4500rpm:前14㎏-m 後19.9㎏-m
■駆動方式:4輪駆動
■燃料消費率:19.2km/l(JC08モード、ハイブリッド走行時)
■使用燃料/バッテリー:無鉛レギュラー/45l:リチウムイオン電池12kWh
■ミッション形式:7無段変速機
■サスペンション:前:マクファーソンストラット 後:マルチリンク
■ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
■乗車定員 :5名
■車両価格:443万4500円(消費税別)
■問い合わせ:電話0120・324・860(三菱自動車 お客様相談センター)
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
写真/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2017年6月号の「名車を利く」欄からの転載です。