文/石川真禧照(自動車生活探険家)
走行性能に優れた車づくりに定評のあるドイツBMW。同社の新型Z4はトヨタとの共同開発とあって注目が集まっている。AI(人工知能)を活用した機能を備えるスポーツカーの魅力を探る。
2011年、BMWとトヨタはリチウムイオン電池の研究で技術提携した。来るべきEV(電気自動車)時代に備えるために、電池の開発を共同で行なおうとした。
その翌年、2社の関係は一層深くなり、電動化や軽量化技術に関しても共同研究開発項目に追加された。さらに驚いたのは、そこにスポーツカーが加わったことだ。
BMWとトヨタがスポーツカーを共同開発する。このニュースに自動車愛好家たちは大いに沸いた。いったいどのようなスポーツカーが発売されるのか──。
実際にスポーツカー・プロジェクトが動きはじめるまでには、さらに1年以上の月日を要した。世界有数の自動車メーカーといえども、スポーツカーは販売台数を稼げる車種ではない。莫大な開発費用をかけてひとつの車をつくり上げたら、何年も生産しなければ商売にはならない。今の時代、長期間、売れ続ける商品力を持つ車はそう多くはないのだ。
低重心化と軽量化を図る
スポーツカーの共同開発は、トヨタが企画を担当。BMWがエンジンと車台の設計および生産を受け持つことになった。そしてBMWは定員2名のオープンカー「Z4」の最新型として、この車をあてることにした。
一方、トヨタはふたり乗りのスポーツクーペとし、BMW製の直列6気筒エンジンを搭載。車名は「スープラ」を復活させることにした。技術提携しているが、車両の開発は両社別々で行なわれた。
今回紹介するZ4は、走行性能を向上させるため低重心化を重視。開閉する屋根は金属や樹脂ではなく、幌を採用し軽量化にも努めた。
幌はスイッチ操作による自動開閉が可能で、時速50km以下であれば走行中でも約10秒で開閉できる。車体は先代よりもわずかに大きくなったこともあり、幌をトランクに格納した状態でも、旅行鞄など中サイズの荷物なら収納には困らない空間も確保されている。
車両重量は1570kgと軽く、車体の前後輪の重量比はほぼ50対50。直列6気筒3Lエンジンは、ターボの力を借りて340馬力を発揮する。理想的な前後の重量バランスと高性能なエンジン。この組み合わせは軽快な走りを満喫できるスポーツカーとして申し分なく、アクセルペダルやハンドル操作に心が躍る。
最新の快適・便利装備も同社の高級車並みに充実している。そのひとつが、AI(人工知能)を活用した音声認識機能だ。これによって、情報取得や室温調節などを声(音声入力)で操作できるようになった。例えばナビゲーション機能は液晶画面に触れることなく、目的地設定などを簡単に行なえる。
車と一体となって走る歓びを味わう。思いのままに操る醍醐味に、“車との意思の疎通”という新たな機能を加えたZ4は、新世代のスポーツカーといえる。
【BMW/Z4 M40i】
全長× 全幅× 全高:4335×1865×1305mm
ホイールベース:2470mm
車両重量:1570kg
エンジン:直列6気筒DOHCターボ/2997cc
最高出力:340PS/5000rpm
最大トルク:51.0㎏-m/1600~4500rpm
駆動方式:後輪駆動
燃料消費率:12.2km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛ハイオク 52L
ミッション形式:8速自動変速機
サスペンション:前/ストラット 後/マルチリンク
ブレーキ形式:前・後::ベンチレーテッドディスク
乗車定員:2名
車両価格:835万円(消費税込み)
問い合わせ:カスタマー・インタラクション・センター 電話:120・269・437
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2019年9月号より転載しました。