美術館の話題の催しに足を運ぶと、“名作”と称される作品の前には多くの人が集まっている。初めて見る人は期待に胸を膨らませ、以前も観たことのある人は感動を新たにすることに歓びを感じている。

同様に、オペラにもスタンダード・レパートリーと呼ばれる“名作”、すなわち世界で人気を呼ぶ著名な作品がある。どこ国のオペラハウスでも、シーズンごとに新作や珍しい作品を積極的に採り上げて新境地を開拓しているが、やはり、このスタンダード・レパートリーはオペラ鑑賞の肝であり、年間プログラムの中心となる。

新しい観客は期待に胸を膨らませ、古くからのファンは感動を新たにしようと、その上演を心待ちにして足を運ぶ。

そんなスタンダード・レパートリーのひとつが、オペラ・ファンならずともその名を知られる『蝶々夫人』。日本に所縁のあるこの“名作”が、日本を代表するオペラパレス、新国立劇場で2月2日から11日まで上演される。

「蝶々夫人」2014年公演より 撮影:三枝近志 提供:新国立劇場

「蝶々夫人」2014年公演より 撮影:三枝近志 提供:新国立劇場

『蝶々夫人』は、『ラ・ボエーム』『トスカ』と並ぶプッチーニの三大オペラのひとつと言われる。明治時代の長崎を舞台に、アメリカ人士官のピンカートンに一途な愛を捧げる蝶々さんの哀しい運命を描いた純愛物語だが、これまでの新国立劇場での上演回数は90回、総入場数は約14万人という、根強いファンをもつスタンダード・レパートリーだ。

「蝶々夫人」2014年公演より 撮影:三枝近志 提供:新国立劇場

「蝶々夫人」2014年公演より 撮影:三枝近志 提供:新国立劇場

今回の公演で蝶々夫人を演じるのは、新国立劇場オペラ研修所から羽ばたき、日本を代表するプリマへと成長した安藤赴美子。いたいけな15歳の少女に始まり、大人の女へと変化していく蝶々夫人役は、演技力も歌唱力も求められる非常に難しい役。数々の名ソプラノが演じてきた、その蝶々夫人役を、待望の日本人ソプラノが演じる。

ピンカートン役は、急速に評価が高まり、今や世界の主要歌劇場でひっぱりだこのイタリア人テノール、リッカルド・マッシ。第一幕の婚礼の宴の後、蝶々さんとのとろけるような「愛の二重奏」には期待が高まる。

もちろん、有名な蝶々さんの「ある晴れた日に」やピンカートンの「さらば、愛の家よ」などの、プッチーニのオペラならではの甘く切なく美しい楽曲、最後場で劇場が涙に包まれる蝶々夫人の「いとしの坊や」等、聴きどころは多い。さらに、「さくらさくら」「君が代」「お江戸日本橋」などの日本のメロディが流れることも含めて、オペラ初心者にも親しみやすく、興味深い名作ともいえる。

「蝶々夫人」2014年公演より 撮影:三枝近志 提供:新国立劇場

「蝶々夫人」2014年公演より 撮影:三枝近志 提供:新国立劇場

「蝶々夫人」2014年公演より 撮影:三枝近志 提供:新国立劇場

「蝶々夫人」2014年公演より 撮影:三枝近志 提供:新国立劇場

初めての人も、かつての感動の再現を待ちわびる人も、客席に着く前に、観劇中に手にするハンカチをお忘れなく。

【新国立劇場 2016/2017シーズンオペラ プッチーニ 『蝶々夫人』[全2幕/イタリア語上演 日本語字幕付]】
■公演日/2017年2月2日(木)〜2月11日(土祝)
■会場/新国立劇場 オペラパレス(東京都渋谷区本町1-1-1)
■問い合わせ/電話03・5352・9999(ボックスオフィス)

※ 新国立劇場オペラ公式サイト
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/

文/堀けいこ

 

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