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「いかなる芸術も、その最後を決定するのは芸術家の人格である」(あらえびす)【漱石と明治人のことば24】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「いかなる芸術でも、その最後を決定するためには、創作者、演奏者の人格にまでもどらなければならない」
--あらえびす

あらえびすの本名は野村長一(おさかず)。胡堂という号を持つ。すなわち、あの『銭形平次捕物控』の作者、野村胡堂のもうひとつのペンネームが、あらえびすなのである。

生まれは明治15年(1882)。盛岡中学では後輩の石川啄木に文学的影響を与えた。啄木が東京朝日新聞社の校正係に採用され、夏目漱石の同僚となるのは、明治42年(1909)のことだ。

野村長一は、ともかく少年時代から音楽好きで、結婚後もその趣味はつづき、集めたレコードは2万枚。『銭形平次捕物控』で作家として名の売れたのは48歳のときだから、むしろ「音楽暦」の方が長かった。したがって、自分では「私は音楽家でも音楽批評家でもない」としながらも、音楽に向き合う審美の耳と熱い情熱は他者に譲らない。掲出のことばの典拠となった著書『名曲決定版』も、古典的名著とされる。

文は人なり、とか、書は人なり、といったことばもあるが、音楽表現においても自ずと人格がにじみ出ると、あらえびすは語るのである。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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