「オペラ・ブッファ」というオペラ専門用語がある。18世紀にイタリアで栄えた喜劇的なオペラのことで、「喜歌劇」とも和訳される。
そんなオペラ・ブッファの中でも特に人気の高い痛快ラブ・コメディ『セビリアの理髪師』が、新国立劇場で間もなく上演される。
イタリアの天才作曲家と言われるロッシーニ随一の人気作にして、オペラ・ブッファの最高傑作である『セビリアの理髪師』。原作はフランスの劇作家ボーマルシェが18世紀後半に書いた同名の戯曲だが、今公演のヨーゼフ・E・ケンブリッガーによる演出では、時代がフランコ政権下の1960年代のスペインが舞台となっている。
スペインのセビリアで理髪店を営むフィガロは、散髪だけでなく、手紙の代筆や恋の取り持ちまでこなす“街の便利屋”。ある日、アルマヴィーア伯爵から、町で見初めた娘、ロジーナとの恋の仲介人を頼まれる。
ロジーナーに近づこうと伯爵とフィガロが何度も変装するなど、あの手この手と作戦を遂行。ついにふたりの結婚を成功させる。
フィガロが早口でまくしたてる「私は町の何でも屋」やロジーナが恋心を歌う「今の歌声は」など、華やかなナンバーに彩られた、コミカルでスパイスの効いた展開が楽しい。
客席が、しばしば大きな笑いに包まれる、文句なしに楽しめる恋の物語りなのだ。
高度なテクニックが歌手たちに要求されるロッシーニのオペラだが、今回の新国立劇場の公演には“ロッシーニのスペシャリスト”と讃えられる超一流の歌手たちが世界から集結。オペラ・ファンの期待が集まっている。
加えて、色彩も鮮やかな衣装や舞台装置が目を惹く演出も注目され、目と耳、心を捉えること間違いなしのオペラなのだ。
ところで、理髪師のフィガロという名前を耳にして、「フィガロの結婚」のタイトルを思イ浮かべる人も多いことだろう。実は、ボーマルシェの原作は、フィガロを主人公とする「セビリアの理髪師」「フィガロの結婚」「罪ある母」の三部作になっており、ご承知の通り第二作の「フィガロの結婚」はモーツァルトによって1786年にオペラ化されている。
ロッシーニによる「セビリアの理髪師」のオペラ化は、その30年後の1816年。今回の新国立劇場での公演は、その初演から200年の記念の年を締めくくる舞台と言える。
なにはともあれ、ユーモアにあふれる抱腹絶倒のオペラで、楽しいひと時を過ごしたい。
【新国立劇場 2016/2017シーズンオペラ ロッシーニ 『セビリアの理髪師』[全2幕/イタリア語上演 日本語字幕付]】
公演日 2016年11月27日(日)~12月10日(土)
会場 新国立劇場 オペラパレス/東京都渋谷区本町1-1-1
■新国立劇場オペラサイト
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■問い合わせ Tel.03・5352・9999(ボックスオフィス)
文/堀けいこ