群雄割拠の戦国時代がおさまり、平和の世が到来し、それを謳歌する気分は絵画の中にも見て取ることができます。各地の名所や邸内を舞台に、現世を楽しむ男女の姿を描いた風俗画が数多く制作され、やがて浮世絵の誕生へとつながりました。
町衆(裕福な町人たち)や公家が支持した京都の俵屋宗達、尾形光琳、そして江戸の酒井抱一らに継承された琳派の様式、華やかな花鳥から虫や魚、犬や猿など生命に目を向けた動植物図、ひいきの遊女や役者を描いた浮世絵など江戸時代の絵画は様々に展開しました。

重要文化財 江戸時代 天保12年(1841)岡田美術館蔵 ◎会期中ページ替あり
岡田美術館で開催の特別展「愛と平和の江戸絵画」は、「愛」と「平和」をキーワードに、珠玉の江戸絵画を紹介する展覧会です。(7月31日~12月7日)
本展の見どころを、岡田美術館の主任学芸員、稲墻朋子さんにうかがいました。
「江戸時代は、徳川家康が幕府を開いた1603年(慶長8)から、終焉を迎える1867年(慶応3)まで、約260年もの長きにわたり平和の続いた、世界史的にも稀有な時代でした。安定した政情のもと経済が繫栄し、多様な文化が育まれ、美術においては幅広いジャンルと表現が誕生した、画期的で魅力あふれる時代に位置付けられます。

本展は、「愛」と「平和」という2つのテーマから江戸時代の絵画をご紹介する展覧会です。泰平の世を謳歌する人々や、穏やかな日常を描いた風俗画、親しみをこめて描かれたいきものたち、家族や恋人など愛する人への想いが伝わる作品の数々を展示します。さまざまな形で表現された「愛」と「平和」のメッセージを受け取っていただければ幸いです。


江戸時代後期 19世紀中頃 岡田美術館蔵
また長年行方が分からず、2016年に再発見され大きな話題を呼んだ伊藤若冲「孔雀鳳凰図」を展示いたします。いきものを観察し、きわめて細密な描写によって表した若冲の初期40歳前後の傑作です。この機会にぜひご覧ください」

世界は今も戦禍が絶えません。平和への願いをこめて!! ぜひ本展をご鑑賞ください。
【開催要項】
特別展「愛と平和の江戸絵画」
会期:2025年7月31日(木)~12月7日(日)
会場:岡田美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
電話:0460・87・3931(代表)
公式サイト:https://www.okada-museum.com/
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:会期中無休
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝
