まるでゴッドファーザーのような道長
A:立后の儀式が、多くの公卿が参列して荘厳に挙行された様子が描かれました。大河ドラマで中宮立后の儀式の様子が登場するとは、平安時代の研究者、平安時代の愛好者の方々にとっては、感無量だったのではないでしょうか。
I:私は、彰子立后の儀式に一条天皇後宮の覇者交代の残酷な現実を強く意識しました。
まるで映画『ゴッドファーザー』のような道長と倫子の表情が印象的でした。
A:確かに、ちょっと胸に迫りくる感じがしました。紫宸殿で盛大かつ厳かに挙行された儀式の後に、皇后定子と清少納言のやり取りが描かれました。この場所がトピックスで、劇中では敢えて紹介されませんでしたが、平生昌(たいらのなりまさ)という中下級貴族の屋敷になります。
I:皇后の在所としてふさわしいか否かといえば、おいたわしいとしか言いようのない屋敷だったということですよね。
A:以前にも平生昌の屋敷にいたことがあって、その際のエピソードが『枕草子』第8段「大進生昌が家に」に記録されています。清少納言ら女官らが屋敷に移る際に、門構えが小規模だったために車が入らず、門前から徒歩で移動したというエピソードですね。
I:本来であれば、上級貴族の屋敷で過ごすべき立場の人が中下級貴族の屋敷で過ごしている。確かにおいたわしい話なのですが、これも左大臣道長への忖度なのだと思うと悲しい気持ちになりますね。
【かくして「神回」となった。次ページに続きます】