かくして「神回」となった
A:さて、そういう背景を踏まえると「彰子立后」の儀式の後にこの場面を挿入してくるとは、大河ドラマ史に刻まれる「神回」だと絶賛したい気持ちに駆られています。ちょっと凄すぎます。
I:皇后定子と清少納言(演・ファーストサマーウイカ)のやりとりは『枕草子』第223段「三条の宮におはします」をベースに描かれていますね。青麦でつくった「青ざし」というお菓子が登場するのは『枕草子』の記述通りの演出です。時系列的にいうと、『枕草子』で皇后定子生前の姿を描いた最後のエピソードだといわれています。
A:ちょっと目がにじんでくるのは、皇后定子の詠んだ和歌「みな人の花や蝶やと急ぐ日も 我が心をば君ぞ知りける(人がみな花よ蝶よといそいそと浮かれ立っている日も、青ざしを贈ってくれたところをみると、わたしの気持ちをあなたは知っていたのでした)」 です。新たに中宮になった彰子には、人がみな花や蝶よと集ってくるのにと、今の自分との対比を歌ったと考えると皇后定子の悲哀が強調されるようで辛いですね。
I:なんとも残酷な覇者交代、女たちの格差が描かれた場面だなとしみじみ思いました。
【皇后定子の辞世の句。次ページに続きます】