「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。
「脳トレ漢字」第209回は、「芋茎」をご紹介します。使われている漢字を見ると、何となく食材であることは分かりますが、読みが少し難しいかもしれません。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「芋茎」とは何とよむ?
「芋茎」の読み方をご存知でしょうか? 「いもくき」ではなく……
正解は……
「ずいき」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「サトイモの葉柄。ふつう、赤茎のものを酢の物・煮物などにして食べる。干しずいきは、いもがらという。」と説明されています。サトイモ類の芋の葉柄で、酢の物や煮物などに使われることが多いです。
芋茎は、東大寺正倉院に伝わる8世紀の古文書・『正倉院文書』にも記載が見られ、古くから食用とされていたのが分かります。芋茎には、白茎と赤茎の品種がありますが、一般的にはえぐみが少なく、柔らかい赤茎のものが食されているそうです。
また、乾燥させたものは「芋幹・芋柄(いもがら)」「芋茎(いもじ)」と呼ばれることが多く、水に浸けてもどしてから調理されます。「ずいき」と呼ばれることが多い「芋茎」ですが、「うけい」という読みもあり、古くは「いもし」と呼ばれることもあったそうです。
「芋茎」の漢字の由来は?
芋茎は、サトイモ類の葉柄のことですが、葉柄は葉身と茎を接続している部分にあたります。茎のような見た目であるため、「芋茎」という漢字が当てられたと考えられます。
また、「ずいき」という読みは、足利将軍家から支持された臨済僧・夢窓疎石(むそうそせき)の「いもの葉に 置く白露の たまらぬは これや随喜の 涙なるらん」という歌に由来すると伝えられているそうです。
関西地方の郷土料理
6月頃から収穫が始まり、これからの季節に旬を迎える「芋茎」。さっぱりとした味わいが特徴の芋茎は、関西地方では古くから夏の伝統野菜として親しまれてきました。特に、「芋茎の炊いたん」は暑い夏の定番料理です。
「炊いたん」は関西地方の言葉で「煮物」を差し、代表的なおばんざいの一つとして知られています。京都では、伝統野菜である海老芋の葉柄も「芋茎」として食され、酢の物やごま和えなどの料理にも使われてきました。
また、大阪では泉州地域や南河内地域を中心に生産されている「紅ずいき」が、7月から8月にかけてスーパーや直売所に並びます。紅ずいきは、大阪府とJAグループが選出する「なにわ特産品」にも選ばれており、家庭料理に欠かせない食材として、古くから愛されてきました。
同じく奈良でも、芋がらを使った煮物や味噌汁などが食卓に並び、芋茎を新聞紙で巻いて遮光栽培した「軟白ずいき」は、大和の伝統野菜に認定されています。また、お盆に芋茎の酢の物や和え物を仏壇に供える地域もあるそうです。
優しい味わいで栄養価も高い芋茎は、体力を消耗しやすい夏にぴったりな食材ですね。
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いかがでしたか? 今回の「芋茎」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 蒸し暑い日が続きますが、美味しい芋茎を食べて、今年の夏も元気に過ごしたいものですね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)
農林水産省公式ホームページ