本連載は腰痛改善がテーマですが、腰痛と同じくらい多い症状が膝の痛み。
加齢による骨軟骨の変形や過去のケガの古傷などが原因の場合も多いのですが、腰痛や坐骨神経痛と関係する場合もあります。
そこで今回は《番外編》として膝の痛みをとりあげたいと思います。
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)に来られる患者さんには、腰と膝両方悪いという方が多くみられます。
初期症状として多いのが、階段、とくに降りる時の膝の痛みです。
膝痛の原因は『ニーイン』
膝痛の原因には様々なものがあり、加齢による骨や軟骨の変形、過去のケガの古傷などが原因の場合も多いのですが、筋力低下などによって膝に負担のかかる動きがおこってしまい、それが原因になる場合もあります。
膝痛をおこしやすい動きのひとつに『ニーイン』があります。
『ニーイン』とは、正確には「ニーイン・トゥー・アウト」といいますが、膝を曲げた時に膝の位置がつま先より内側に入ってしまう動きを指します。
ここでひとつテストをしてみましょう。
下の画像のように壁などに手をついて身体を支えながら、片脚だけで立って軽く膝を屈伸してみましょう。
この画像の場合、左脚(前に出している脚)で立ち、軽く屈伸をしています。
この時に、膝を正面から見て膝の位置がまっすぐに上下していれば正常です。
膝を曲げた時に、膝の位置が初めにあった位置より内側に(つま先より内側に)入ってしまうようであれば、あなたは『ニーイン』の傾向があるでしょう。(下画像)
『ニーイン』がおこると、膝を曲げ伸ばしするたびに膝関節に横方向への曲がりやねじれの負荷がかかります。
膝は横方向からの負荷に弱い関節なので、これによって組織に損傷や痛みがおこったりするのです。
つまり、階段を降りる時に『ニーイン』がおこるために膝が痛くなる、ということなのです。
『ニーイン』を防ぐには股関節のトレーニングが必要
膝に痛みがおこると膝周囲の筋力の低下などがうたがわれることが多いのですが、『ニーイン』の場合は膝の周囲には問題がみられないことがあります。
実は『ニーイン』の原因は股関節なのです。
膝の関節は前後に曲がる関節なので、膝自体が横に動くことはありません。膝が内側に入ってしまう動きは、膝でおこっているのではなく股関節でおこっています。
膝を曲げる動作の時に股関節が内側に動いてしまうため、それにともなって膝も内側に入ってしまうのが『ニーイン』の原因となります。
したがって『ニーイン』を防ぐには、股関節が内側に動かないように支えるトレーニングが必要になります。
股関節が内側に入ってしまう原因は、内側に入らないように支えている筋肉(筋力)が弱くなってしまったためです。
その弱くなってしまった筋肉とは、中殿筋や小殿筋、梨状筋などです。(下画像右半分の筋肉)
また、これらの筋肉が弱くなったり固くなったりすると、骨盤周囲や腰、股関節、脚にかけて痛みやしびれがおこることがあり、腰痛や坐骨神経痛の原因となる場合もあります。
『ニーイン』を防ぐトレーニング
中殿筋や小殿筋、梨状筋のトレーニングには様々なものがありますが、筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)では、次のような2つのトレーニングからおこなうことをおすすめしています。
(1)梨状筋トレーニング クラムシェル
横向きに寝て、膝を90度にして股関節を軽く曲げます。(上画像の上)
その姿勢から足はつけたまま、上側の脚の膝だけを開くように持ち上げます。(上画像の下)
この時に腰は一緒に動かないようにしてください。股関節から先だけを開くように持ち上げます。
うまく梨状筋に効くと、股関節の奥に効く感じや、股関節の奥が熱くなるような感じが出ます。
貝が口を開くように見えるトレーニングなので、クラムシェルトレーニングといわれています。
この動作を10回1セットとして、1日1~3セットほどおこないます。
※痛みのためにこのトレーニングができない、またはこのトレーニングをおこなうと痛みが増す、などの場合はやめてください。
(2)中殿筋・小殿筋トレーニング
クラムシェルトレーニングの準備姿勢から、上側の脚をまっすぐ伸ばします。(下の脚は曲げたままで大丈夫です)
そこから上の脚を横にまっすぐ上げ下ろしをします(上画像)。この時に腰や骨盤が動かないように気を付けてください。
股関節から先だけを持ち上げます。
うまく中殿筋・小殿筋に効くと、骨盤のあたりで効く感じや熱くなるような感じが出ます。
この動作を10回1セットとして、1日1~3セットほどおこないます。
※痛みのためにこのトレーニングができない、またはこのトレーニングをおこなうと痛みが増す、などの場合はやめてください。
この記事があなたの膝痛予防改善の一助になれば幸いです。
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文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html