腰痛を解消するにはトレーニングが不可欠です。
前回の記事(https://serai.jp/health/1149253)は、体幹インナーマッスル→大殿筋→内転筋群の順番でトレーニングするのが望ましいことを説明しました。
今回は具体的なトレーニング方法を解説します。
前回のおさらい
腰を支える筋肉はたくさんありますが、その一部が弱くなると、他の筋肉や背骨に大きな負担がかかり、やがて痛みをおこすようになってしまいます。
腰痛を解消するためにとくに大事な部位(筋肉)は、
(1)体幹インナーマッスル(腹横筋、骨盤底筋、多裂筋、横隔膜)
(2)大殿筋
(3)内転筋群
の3つです。
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://re-studio.jp/)では、体幹インナーマッスル⇒大殿筋⇒内転筋群の順番でトレーニングしていくことをおすすめしています。
まず体幹インナーマッスルのトレーニングをおこなって、腹圧をうまくかけられるようになることが最も重要です。
体幹インナーマッスルは、腹圧によって身体の内側から背骨や骨盤を支えるのに対して、大殿筋は外側から骨盤や背骨や股関節を支え、内転筋群も外側から股関節や骨盤を支えています。
内側を支える力が弱い状態で、外側の筋肉をトレーニングすると、腰や背骨に負担をかけてしまい、かえって腰痛をおこしたり悪化させてしまったりする可能性があるのです。
腹圧を使って体幹を支える力を養ってから他のトレーニングをおこなうことがとても大事なのです。
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
腰痛を解消するためにトレーニングすべき3つの部位とその順番【川口陽海の腰痛改善教室 第120回】(https://serai.jp/health/1149253)
(1)体幹インナーマッスルのトレーニング
腰痛解消に大事なインナーマッスルとしては、腹横筋(ふくおうきん)、骨盤底筋(こつばんていきん)、多裂筋(たれつきん)、横隔膜(おうかくまく)があります。
これらは4つの別々筋肉なのですが、同時に働くことで腹圧(お腹の中の圧力)を高め、体幹の内側から腰や背骨を支えるという役割をしています。
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、まず腹式呼吸などをもちいたトレーニングをおすすめしています。
以下を参考におこなってみてください。
自宅で出来る!腰痛トレーニング(https://www.re-studio.jp/dvd.html)より
※画像では専用のポールに乗っておこなっていますが、床に寝たままおこなっても同じような効果があります。
1.床にあおむけになり両膝を立てた姿勢をとります。
2.そこから腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切っていきます。
このときに、おへその下あたり(下腹部)をへこますようにしながら息を吐いていきます。
下腹部をへこますようにしっかりと息を吐ききることで、腹横筋に力が入るようになります。
息を吸うのは軽く、吐くときはお腹の底からしっかりと吐き切るようにしましょう。
3. 息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める。
2ができたら、今度は下腹部(腹横筋)と肛門(骨盤底筋)を同時に締める練習をします。
腹式呼吸で息を吐き切りながら、下腹と肛門を同時に締めるように力を入れてみましょう。
うまくしっかり吐き切りながら肛門を締められると、下腹部に強く力が入り、固くなるのがわかります。
またこのときに背中や腰や脚は力を抜いてください。
背中や腰や脚に力が入ってしまうと、かえって痛みをおこしやすくなりますので注意してください。
4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。
恥骨を引き上げるとは、みぞおちの方に向けて腹筋で引き上げるようにすること(下画像オレンジ矢印)です。
すると骨盤は後傾方向に回転します(黄色矢印)。
こうすることでさらに腹圧が高まりやすくなり、腰をしっかり支える姿勢をとりやすくなります。
これらのトレーニングを1日30回を目標におこなってみましょう。
いっぺんに30回でも構いませんし、10回ずつ朝昼晩のように分けても構いません。トータルで30回が目安です。
30回以上できるようなら、やればやるほど効果は出ます。
しかし、腰や背中、脚などに余計な力みがあると、かえって痛みをおこすことがありますので、その点はご注意ください。
また効果が出てくるまでには少し時間がかかります。2週間から1か月程度は根気よくトレーニングを続けてください。
ご注意)このトレーニングをおこなうことで痛みが出る、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
(2)大殿筋のトレーニング
大殿筋(だいでんきん)は、お尻の大きな丸みを作っている筋肉です。
骨盤や腰をまっすぐ立てて支えたり、股関節を支えたり、脚を後ろに蹴りだしたりするときに働く筋肉です。
大殿筋のトレーニングにもさまざまな方法がありますが、腰痛の方でもおこないやすい方法としてヒップリフトのトレーニングをおすすめします。
以下を参考にして取り組んでみてください。
はじめに仰向けになったときに、踵の位置をできるだけお尻に近づけた方が殿筋に力が入りやすくなります。
お尻を上げていくときに、お尻の筋肉を締めるように力を入れます。お尻の割れ目を力を込めて閉じるような感覚です。
また、このときに脚や腰や背中の力はできるだけ抜いて、お尻の力をしっかり使うようにしてください。
ご注意)このトレーニングをおこなうことで痛みが出る、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
(3)内転筋群のトレーニング
内転筋群は、太ももの内側にある筋肉で、長内転筋(ちょうないてんきん)、短内転筋(たんないてんきん)、大内転筋(だいないてんきん)などの総称です。
これらの筋肉は、脚を閉じるときや、股関節や骨盤を支えるときに働きます。
内転筋群のトレーニングにもさまざまなものがありますが、腰痛の方でもおこないやすい方法としてワイドスクワットのトレーニングをおすすめします。
いわゆる四股踏みスクワットです。
以下を参考にやってみてください。
自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより(https://re-studio.jp/dvd/)
足を広めに開き、つま先を45度くらいに外に向けて立ち、下腹を引っ込めるようにお腹を締めます。
膝に手を置くようにしながら腰を落とします。
腰を落とすときに、上半身はなるべくまっすぐにして、前傾姿勢にならないようにするのが良いでしょう。
できれば太ももが床と平行になるくらいまで腰を落とします。
そこまで落とすのが無理な場合は、膝が45度曲がるくらいまで頑張ってみましょう。
そこから腰を上げていきますが、内ももとお尻を締める力で戻るようにおこないます。
内ももとお尻を締める力とは、例えば膝の間に大きなボールをおいて、それを膝で絞めてつぶすようなイメージです。(下図)
膝や腿の前側で踏ん張ってしまうと、殿筋、ハムストリング、内転筋に効きづらくなってしまいます。
内ももやお尻を意識して使うようにすると、それらの筋肉に効いてきます。
実際にバランスボールなどを挟んでおこなうのも良いでしょう。
一動作をゆっくり5~10秒くらいかけ、はじめは1日に10~20回程度、慣れて来たら少しずつ回数を増やし、40~60回を目標に頑張ってみましょう。
はじめのうちは筋肉痛が出るかもしれません。その場合は1~3日に1回程度から様子を見て、徐々にトレーニング日数を増やしましょう。
※ご注意)痛みのためにこの動作ができない、またはこの動作をおこなうと症状が悪化する時はやめてください。
この記事があなたの腰の痛みを改善する一助になりましたら幸いです。
また以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛解消法をご紹介しております。
ぜひお読みください。
お尻を鍛えて腰痛改善! 大殿筋のトレーニング【川口陽海の腰痛改善教室 第115回】(https://serai.jp/health/1134892)
腰痛改善には必須! 体幹インナーマッスルトレーニングとは?【川口陽海の腰痛改善教室 第104回】(https://serai.jp/health/1106038)
動かないのは逆効果! 腰痛・坐骨神経痛を改善する歩き方【川口陽海の腰痛改善教室 第92回】(https://serai.jp/health/1080027)
腸腰筋を鍛えて腰痛改善! 腰が痛くても安全なトレーニング法【川口陽海の腰痛改善教室 第86回】(https://serai.jp/health/1067156)
腰痛・坐骨神経痛の原因は股関節! 股関節トレーニングで痛みを改善【川口陽海の腰痛改善教室 第81回】(https://serai.jp/health/1057841)
拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html