慢性腰痛を改善するには、体幹インナーマッスルトレーニングが有効です。
体幹インナーマッスルとは何か? なぜこのトレーニングが重要なのか? について解説します。

腰痛が慢性化してしまうのは筋力低下が原因のひとつ

腰痛の発症や慢性化してしまう原因にはさまざまなものがありますが、そのひとつとして体幹の筋力低下が考えられます。

体幹には多くの筋肉が存在し、協力して腰や骨盤など体幹を支えています。

それらの筋肉は、外層・中間層・深層の3つに分類され、それぞれ次のような役割があります。

外層:姿勢を維持し、体幹の大きな強い動きを行なう(いわゆるアウターマッスル)
中間層:姿勢の安定
深層:背骨の制御、背骨の動きを脳に伝達する

中間層と深層の筋肉を総称して、体幹インナーマッスルと呼ばれています。

腰痛の改善で特に重要になるのは中間層の筋肉です。

【腰部体幹筋群の断面・中間層の筋肉】

中間層には腹横筋や内腹斜筋、多裂筋などの筋肉があり、骨盤底筋や横隔膜とともに腹圧を高めて背骨や骨盤を体の内側から支える働きをしています。

腹横筋や内腹斜筋は腰からお腹の骨のない部分をぐるっと取り巻くように位置しており、その形は腰痛ベルトやコルセットのようです。

これらの筋肉が働く(収縮する)と、まさにコルセットを締めるのと同じように、お腹を引っ込めるように力が入ります。

すると、ふくらませた風船を外側から締めたときのように、内部の圧力(腹腔内圧)が高まります。

その内側からの圧力や、外層の筋肉や筋膜の張力によって、腰や骨盤が内と外から支えられるのです。(下図)

【腹圧で背骨を支えるメカニズム】

これら体幹中間層の筋群の筋力や機能が低下していると、体幹外層の筋群をはじめとして、本来腰を安定させるための筋肉ではない部分に負担をかけてしまうため、腰痛をおこしやすくなったり慢性化したりする原因となってしまうのです。

腰痛改善トレーニングのポイント

今までご説明したように、腰痛を改善するには体幹中間層のインナーマッスル群を強化することが有効となります。

では具体的にはどのようなトレーニングを行なったら良いでしょうか?

腰痛改善のトレーニングというと、仰向けで上半身を起こすいわゆる腹筋トレーニングや、うつぶせで背中を反らす背筋トレーニングなどを思い浮かべる人が多いかもしれません。

まず上半身を起こす腹筋トレーニングは、近年の研究では腰に負担をかける可能性があることから、プロスポーツや米軍などのトレーニングから除外されるという動きがあります。

したがって腰痛改善トレーニングには不向きと考えられます。

最近ではプランクなどのトレーニングも人気で、インナーマッスルトレーニングや腰痛改善トレーニングとして紹介されることもあります。

このトレーニングはある程度筋力や体力、運動習慣があり、腰痛も比較的軽度であれば取り組んでよいと思います。

しかし慢性的に腰痛があり、普段あまり運動をしない、筋力や体力が低下しているなどの場合はかえって症状を悪化させてしまう可能性があり、おすすめできません。

なぜなら、上記のような方は腹横筋など体幹中間層の筋肉に力が入りづらくなっているため、アウターマッスルを主体にして腰の筋肉を使ってしまうことがあるためです。

筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、まず腹式呼吸などをもちいて体幹中間層の腹横筋を強化したり、骨盤後傾トレーニングによって腰部筋群の緊張を取り除いたりするトレーニングをおすすめしています。

以下を参考にして取り組んでみてください。

自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://www.re-studio.jp/dvd.html

※画像では専用のポールに乗って行なっていますが、床に寝たまま行なっても同じような効果があります。

1.床にあおむけになり両膝を立てた姿勢をとります。
2.そこから腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切っていきます。

このとき、おへその下あたり(下腹部)をへこますようにしながら息を吐いていきます。

下腹部をへこますようにしっかりと息を吐き切ることで、腹横筋に力が入るようになります。

息を吸うのは軽く、吐くときはお腹の底からしっかりと吐き切るようにしましょう。

3.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める

2ができたら、今度は下腹部(腹横筋)と肛門(骨盤底筋)を同時に締める練習をします。

腹式呼吸で息を吐き切りながら、下腹と肛門を同時に締めるように力を入れてみましょう。

うまくしっかり吐き切りながら肛門を締められると、下腹部に強く力が入り、固くなるのがわかります。

またこのときに背中や腰や脚は力を抜いてください。

背中や腰や脚に力が入ってしまうと、かえって痛みを起こしやすくなりますので注意してください。

4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。

恥骨を引き上げるとは、みぞおちの方に向けて腹筋で引き上げるようにすること(下画像オレンジ矢印)です。

すると骨盤は後傾方向に回転します(黄色矢印)。

こうすることでさらに腹圧が高まりやすくなり、腰をしっかり支える姿勢をとりやすくなります。

これらのトレーニングを1日30回を目標に行なってみましょう。

一度に30回でも、10回ずつ朝昼晩のように分けても構いません。トータルで30回が目安です。

やればやるほど効果は出ますので、30回以上できるようなら行なってみてください。

しかし、腰や背中、脚などに余計な力みがあると、かえって痛みを起こすことがありますので、その点はご注意ください。

また効果が出てくるまでには少し時間がかかります。2週間から1か月程度は根気よくトレーニングを続けてください。

このトレーニングを行なうことで痛みが出る、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。

この記事があなたの腰や脚の痛みを改善する一助になりましたら幸いです。

また以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。

これだけでOK! 背骨矯正<大の字ストレッチ>で慢性腰痛を改善【川口陽海の腰痛改善教室 第97回】https://serai.jp/health/1089887

浅い呼吸が不調を招く! ろっ骨と背骨をゆるめる簡単呼吸法で腰痛・肩こりを改善【川口陽海の腰痛改善教室 第94回】https://serai.jp/health/1083643

動かないのは逆効果! 腰痛・坐骨神経痛を改善する歩き方【川口陽海の腰痛改善教室 第92回】https://serai.jp/health/1080027

腰痛が治らない思考・行動パターン『痛みの悪循環』から抜け出す方法【川口陽海の腰痛改善教室 第89回】https://serai.jp/health/1073698

3分で腰の疲れをとって腰痛を予防! 誰でも毎日できる簡単ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第88回】https://serai.jp/health/1070834

拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。

文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html

腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(健康プレミアムシリーズ)川口陽海(著/文) 永澤守(監修) 発行:アスコム
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