3ヶ月で11.3キロのダイエットに成功した、歯科医師・宮本日出先生の著書『レモン水うがいダイエット』から、「デブ味覚」について紹介します。

文/宮本日出

太った人は「デブ味覚」になっている!

「食べるのを我慢するのがつらい」
「甘いものを食べたり、辛いものを食べたりを繰り返してしまう」

ダイエット経験のある人なら、こうした食欲を抑えるむずかしさを実感しているでしょう。食欲を抑えるのが難しくなってしまっているのには、大きな理由があります。それは、味覚が鈍感になっているからです。

肥満の人は4つの「基本味覚」のすべてが鈍感になり、標準体型の人とは異なった味覚、いわゆる「デブ味覚」になっているとされています。

肥満度を表す指標にBMI(Body Mass Index)があります。BMIは[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出しますが、このBMIの値が22前後が標準体重とされ、25以上になると肥満となります。

オーストラリアで行われた味覚と肥満に関する研究によると、BMIが25以上の肥満の人と標準体重以下の人を比べたところ、25以上のグループのほうが味覚は鈍感だったという結果が出ています。

つまり、味覚が鈍感になると、たくさん食べても、食に対する満足感が得られず、満足するまで必要以上のエネルギーを摂取してしまうため、なかなかやせることができないというわけです。

私たちの舌には「味蕾」と呼ばれる突起物があり、そこで食べ物の味を感じます。これが味覚といわれるもので、次の4つが「基本味覚」とされています。
1.苦味
2.酸味
3.塩味
4.甘味 

この4つの基本味覚は、それぞれ敏感さに差があります。
もっとも感じやすいのが苦味で、1→4の順に感じにくくなります。苦味をもっとも敏感に感じるのは、多くの毒物に苦味の成分が含まれているからです。体には、「苦味を感じるもの=有害物」と無意識のうちに鋭く察知し、“危険のシグナル”として避けようとする本能が強く備わっています。そのため、苦味には食欲を抑制する働きがあるのです。

次に感じやすい酸味は、腐敗を感知する味覚です。これもまた、生きるための注意信号として、味を感じやすくなっています。この「味を感じやすいグループ」である苦味と酸味の含まれる食べ物は、どちらかというと、日常生活ではとりすぎることはありません。

一方、塩味と甘味は「味を感じにくいグループ」です。塩分も糖も「とりすぎてはいけない」とよくいわれますが、それはとりすぎてしまうほど「感じにくい味」だからです。

塩味を感じさせる塩分は、体内のバランスを調整するのに重要な役割を果たします。塩分不足になると栄養を体内に取り込めなくなるので、一定程度以上取り込めるように、舌は塩味を感じにくくなっています。また、甘味を感じさせる糖は体のエネルギー源となります。確実に生命を維持するために糖をたくさん食べられるように、甘味も感じにくくなっているのです。

このように味覚は食欲と深く関係があることが、おわかりいただけたのではないでしょうか。ダイエットを成功させるには、こうした味覚の感じ方をコントロールし、食欲を抑えることがカギとなります。

こんな生活で「デブ味覚」になる

では、デブ味覚になってしまう食生活や、脂肪の多い太りやすい食生活になってしまう原因は何なのでしょうか。

1.洋食中心の食生活

現在の食生活には加工食品や出来合いの惣菜が欠かせません。店で提供されている食事は伝統的な和食よりも洋食のほうが多いです。洋食は総じて味が濃く、脂肪の量も多くなりがちです。

こうした食事に慣れてしまうと、淡泊で低脂肪な食事では物足りなくなってしまいます。するとだんだんと摂取カロリー過多となり、消費されなかったエネルギーが脂肪となって体に蓄積されていきます。

2.朝食抜きの生活

実は、朝食を抜く生活も太る要因の1つです。朝食を抜いて長時間体内に栄養が入らなくなると、体が飢餓状態になります。体に入った食べ物から、わずかな脂肪でも体に蓄えようとするため、肥満の原因になってしまうのです。

特に若い人たちのあいだには、朝食をとらない人が増えてきています。

平成30年の厚生労働省の調査によると、20〜29歳で朝食を抜く人の割合は、男性で約29.9%、女性で約18.9%、一人暮らしの人では、男性で約68.8%、女性で約16.7%となっています。

その後、コロナ禍による在宅時間の増加により、20〜29歳で朝食を抜く人の割合は、男性で約27.9%、女性で約18.1%、一人暮らしの人では、男性で約29.2%、女性で約35.7%となっています。全体としては、コロナ禍以前よりは朝食を抜く人の割合は減りましたが、1人暮らしの女性については増加しています。

新しい生活様式の定着により、朝食をとる健康的な生活をする人が増えた一方で、収入の減少から朝食をとらなくなる人も現れるなど、二極化が進んでいるようです。

3.テイクアウト、冷凍食品をよく食べる

新型コロナウイルス感染症による自粛生活では、8割以上の人が飲食店のテイクアウトを利用するようになり、冷凍食品やレトルト食品を活用する人も増えました。いずれも味が濃く、脂質や糖質の多い、ダイエットにはもっとも不向きな食事です。

こうした生活を続けていては、どんなにダイエットをしてもうまくいきません。この食生活によってますますデブ味覚になるからです。

我慢しようにも、デブ味覚が「もっと食べたい!」と暴れ出してしまいます。脂質の多い食事をとることで、さらに味覚が鈍くなり、どんどん太っていく、という負のループに入ってしまうのです。

やせるためには、通常の味覚を取り戻し、食生活を変え、負のループをどこかで断ち切る必要があります。

* * *

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宮本日出(みやもと・ひずる)
歯科医師、口腔外科評論家。1990年愛知学院大学歯学部卒業後、アデレード大学(歯科博士〔Ph.D〕取得)、明海大学で口腔外科最先端医療の臨床的、基礎的研究に従事し、アメリカ、イギリス、オランダ、ドイツ、オーストラリア、日本で160編を超える医学論文を発表。2000年には第13回日本顎関節学会学術大会で優秀賞を受賞。2007年幸町歯科口腔外科医院(埼玉県志木市)を開業。現在は「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)、「AWAKE」(bayfm)などのTV・ラジオ出演をはじめ、Yahoo!ニュース、ダイヤモンド・オンライン、PRESIDENT Online、歯科医療最大級のwebサイト「WHITE CROSS」などのウェブメディア、患者さんと歯科医院をつなぐ治療説明用マガジン「nico」(クインテッセンス出版)などで情報を発信し、話題の歯科医師として幅広く活躍中。

 

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