文/鈴木拓也
「間食」という言葉に、どのようなイメージをお持ちだろうか?
おそらく、「太る原因」「健康に悪い」など、マイナスの印象に違いない。
たしかに、1日3食に加え、激甘なお菓子をしょっちゅう食べていれば、健康に良くはない。
でも……
「適切な間食」であれば、逆にさまざまな健康効果を得られると言われたらどうだろうか?
「適切な間食」の数々の効用
そんな間食の活用をすすめるのは、すずきこどもクリニックの鈴木幹啓院長だ。
鈴木院長によれば、「適切な間食」には以下の効用があるという。
・空腹による食事でのドカ食いを防ぐ
・食後血糖値の急上昇を防ぎ、血糖値が安定する
・空腹によるストレスや集中力の低下が防げる
「本当かな」と思われるかもしれない。鈴木院長自身、6年前に93kgの体重を減らそうとして、いの一番に止めたのは間食であった。
しかし、その頑張りは長続きせず、挫折を繰り返したそうだ。
その後、発想を転換。食事量は多少減らしつつ、間食を日常に取り入れたところ、ほんの4か月で24kg減量し、今も適正体重をキープできているという。
その成功体験をきっかけに、鈴木院長は『医師が教える最強の間食術』(アスコム)を上梓。摂るべき間食について、徹底解説をしている。
ポリフェノールの量は「りんごの約12倍」
少しもったいぶってしまったが、本書で鈴木院長が「適切な間食」として挙げているのは、ずばり「高カカオチョコレート」だ。
高カカオチョコレートとは、カカオ成分を70%以上含んだチョコレート。今では、スーパーで普通に売られている、ちょっと苦いチョコレートを指す。
間食として、ほかにも候補がありそうななか、これを選んだのは、「ポリフェノールが豊富」「太りにくい」「おいしくて手軽に食べられる」の3条件が揃っていたからだという。
詳細は割愛するが、ポリフェノールとは植物に含まれる抗酸化物質の総称で、人間の老化現象を抑制する働きがある。また、高カカオチョコレートは意外とGI値が低く、食後血糖値が上がりにくく脂肪が貯まりにくいという特徴がある。
72%の高カカオチョコレートでみると、ポリフェノールの量は「りんごの約12倍、バナナの約7倍」、GI値は、55で低GIとランク分けされるが、それよりさらに低い29しかない。
特にチョコレートの主原料となるカカオに含まれるポリフェノールには、体内のBDNFを増やす働きがあるという。
BDNFとは、脳の活動をサポートする栄養分。脳神経細胞の維持・成長などに関わる重要な役割を担っており、加齢とともに減っていくことが知られている。
高カカオチョコレートを摂ることで、脳内のBDNFが増え、「脳の認知機能が高まる可能性がある」という。
また、テオブロミンという、ほかの植物には滅多に含まれていない成分が、カカオには含まれている。これには、「集中力や記憶力を高めたり、自律神経を調整して、脳や体をリラックスさせたりする効果」があるそうだ。
高カカオチョコレートの健康成分はこれにとどまらないが、間食としていかに優れた食品であるか理解できよう。
料理に活用してもおいしい
鈴木院長によれば、高カカオチョコレートの1日に摂りたい分量は25gだという。これを5回に分けて食べる「チョコちょこ食べ」を推奨している。
そして、「毎日こればかりでは飽きる」という方に向け、高カカオチョコレートを使った料理もすすめている。意外な隠し味として、また肉や発酵調味料とも相性が抜群なのだそうだ。
本書に収載されているうちの一品を紹介しよう。
揚げごぼうと高カカオの快腸ミックス
【材料(2人分)】
・ごぼう:100g
・じゃこ梅の高カカオフレーク(梅干し2個、ちりめんじゃこ20g、高カカオチョコレート50g):大さじ2~3
・揚げ油:適量
【作り方】
1 まず、ちょい足し食材となる「じゃこ梅の高カカオフレーク」を作る。高カカオチョコレートは、厚手のポリ袋と保存袋を重ねた中に入れ、めん棒などでたたき、細かく砕く。梅干し2個は種を取り、電子レンジで30秒加熱して細かくきざみ、ちりめんじゃこ、高カカオチョコレートと混ぜる。
2 ごぼうは皮をそいで斜め薄切りにし、水気をふき取る。
3 2を170度に熱した油でカラッとするまで揚げ、油をきる。
4 器に盛り、じゃこ梅の高カカオフレークをかける。
ごぼうは、水溶性食物繊維のイヌリンやオリゴ糖が豊富。腸内の悪玉菌を減らし、善玉菌を増やす効果がある。
* * *
アメリカでは、食生活に間食を取り入れる「ヘルシースナッキング」という新習慣が注目されているという。鈴木院長は、一方的な決めつけで間食を避けるのではなく、「適切な間食を摂る時代が来ている」と記す。間食抜きのダイエットで挫けそうな方は、むしろ高カカオチョコレートの「チョコちょこ食べ」へ方向転換してみるとよいかもしれない。
【今日の健康に良い1冊】
『医師が教える最強の間食術』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。