鹿児島県東部、大隅(おおすみ)半島の付け根・曽於(そお)市に立つ大隅酒造。平成17年に操業を開始し、現在サントリーグループの製造拠点として稼働している。
この酒造が手掛ける芋焼酎「大隅〈OSUMI〉」は、これまでにない味わいを実現。グラスから立ち上るのはさつま芋の自然な甘い香り、口に運べばなめらかで芋らしいふくらみが広がり、すっきり軽やかに喉を潤す。芋焼酎というと香りや味にクセがあり、通が好む酒というイメージがあるが、それを覆す新たな焼酎である。
素材の芋はミネラル豊富な黒ボク土が育む黄金千貫(こがねせんがん)。でんぷん質が豊富だが傷みやすいため、秋の収穫期に畑からすぐに運び、手作業で選別して、巨大な蒸し器へ。
じつはこの選別作業が重要で、洗浄した芋をチェックし焼酎の香味に影響する芋傷み部分を丁寧に取り除き、蒸したときにムラが出ないように大きいものはカットして大きさを揃える。最終的な品質を左右する作業のため、熟練のスタッフが厳しい目を光らせ作業を行なっている。
仕込み水はシラス台地に磨かれた清冽な井戸水を使い、麹づくりや発酵など各工程で熟練の職人が目を光らせる。もっとも特徴的なのが独自製法の「香り厳選蒸溜」である。これは蒸溜後半にできる雑味や苦味成分を含む蒸溜液を取り除いて抽出する方法で、サントリーの洋酒技術を応用したものだ。これにより、素材本来の香りが際立つ芋焼酎が完成する。
「大隅〈OSUMI〉」は、芋焼酎のほか麦焼酎も製造。取材時は、その製造過程を見学することができた。まずは麹づくりの作業である。原料は粒の大きいものを厳選した二条大麦。ドラム型の製麹機に2トンの麦を入れ、種麹(黒麹)を振りかけて2日間かけてつくる。この間も、必ず職人が温度コントロールを行なう。「麴づくりは人と微生物の対話が必要なのです」と話す工場長の斯波大幸(しばひろゆき)さん(56歳)。できたての麦麴を食べてみると爽やかな酸味がある。この酸味はクエン酸で、雑菌の繁殖を抑制する大切な要素である。
次に発酵の作業である。6トンの麹に7200リットルの水、酵母を加えて5日間発酵させる1次発酵、2次発酵と続く。
こうしてつくられたもろみはステンレス製の単式蒸溜器で、「香り厳選蒸溜」へ。雑味や苦味成分を含む蒸溜後半の蒸溜液を取り除くという製法は、蒸溜の最初と最後を取り除くミドルカットというウイスキーの製法を応用したもの。だが取り除いた蒸溜液はどうなるのだろうか。「取り除いた部分は、焼酎製造では普通に行われている末タレ回しと同様、翌日のもろみに戻して蒸溜します」と工場長。さすが、無駄がない。麦焼酎はじつにフルーティーで、すっきり華やか。芋焼酎同様、焼酎初心者も安心の旨さである。
また、大隅酒造では焼酎づくりでは珍しい、原酒のつくり分けとブレンドも試みている。作り分けでは麹は黒麹・白麹、蒸溜法では常圧・減圧・香り厳選蒸溜、貯蔵ではタンク・甕といった具合に、多彩だ。このような試みも特筆に値する。
「身も心も大隅の自然と溶け合う飲み心地を体感していただきたいです」と話す工場長。 焼酎づくりの伝統と革新の技術が生み出す至福の一杯を味わいたい。
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