道端にふと現れるお地蔵さま。小さな祠に祀られていることもあれば、公園の片隅で風雨にさらされていることも。そんなお地蔵さまに魅了された写真家・野口さとこさんの連載『魅惑のお地蔵さま巡り』から、京都と奈良のお地蔵さまをご紹介します。
京都を中心とした近畿地方では「地蔵盆」が行われているところも多く、地域の人々に愛されているお地蔵さまが点在しています。「地蔵盆」とは地蔵菩薩の縁日である旧暦の7月24日の前日を中心に、供物などを供えておまつりする行事で、子供が中心になって行われています。
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■こぼれる笑顔に気持ちがほっこり|京都府・北白川
京都府左京区北白川の琵琶湖疎水の流れる自然豊かな遊歩道の脇。理容室のお隣にその祠はあります。こちらのお地蔵さまは三本の曲線で描かれたシンプルにして福々しい表情をされています。
このお顔は、20年ほど前から、毎年の地蔵盆のたびに子供たちがお顔を洗い流して、新しく描くようになったそうです。素朴な笑顔にほっこりしますね。
見た途端に笑顔になれる!京都・北白川の「にっこり地蔵」【魅惑のお地蔵さま巡り1】
■毎年変わるお顔を定点観測|京都府・出町柳
お顔やお身体を描かれ、彩色を施されたお地蔵さまのことを「化粧地蔵」と呼びます。京都の京阪電車の出発点、叡山電車の出発点である出町柳駅の近くにいらっしゃるお地蔵さまも、毎年お顔が変わります。
にっこりしていたり、伏し目がちだったり、ふっくらしたり、耳が加えられていたりと、年によって変わるお顔を拝みに行きたくなるお地蔵さまです。
お顔の変化を定点観測! 京都・出町柳の「化粧地蔵」七変化【魅惑のお地蔵さま巡り5】
■その背中に背負うのは天使の羽根!?|京都府・高野蓼原町
京都の路地を彷徨っていた野口さんが見つけた4体のお地蔵さま。そのうちの1体に描かれた羽根を見て、「なるほど、お地蔵さまとはエンジェルだったのだ」と思ったそうです。
人間ひとりひとりに寄り添い、救い導く“神の使い”であるキリスト教のエンジェルと、お釈迦様の入滅後、56億7000万年後に弥勒菩薩が出現する間の無仏の時代、迷える人々を救うお役目を担った“釈迦の使い”であるお地蔵さまの存在は、たしかに似ていますね。
お地蔵さま×天使!京都「エンジェル地蔵」に奇跡の習合を見た【魅惑のお地蔵さま巡り 第8回】
■水ではなく油をかけて願掛け|京都府・油掛町
京都市右京区、その名も油掛町で祀られているお地蔵さまは鎌倉中期に造られた石仏で、300年以上前から油を掛けて祈願する風習があったそうです。1967年に地蔵奉賛会の方々によって油落しが行われましたが、それまでは分厚い油の層に覆われて、どんなお顔をしているのかさえ分からなかったとか。
お堂には油の入った容器と杓子が用意されており、この油をお地蔵さまに掛けてお参りします。
黒光りする油まみれのお地蔵さま|京都・右京区『油掛け地蔵尊』 【魅惑のお地蔵さま巡り 第10回】
■橋の下、団体で舟に乗るご一行|奈良県・率川(いさがわ)
奈良市の猿沢池の南西に位置する率川にかかる橋から、拝見することができる率川地蔵尊。幕末の頃、周辺の河川工事の際に見つかったので、ここに集めてお祀りするようになったのだそうです。
橋の上からお参りできるように、手すりに賽銭箱が備え付けてありますが、下に降りて近くでお参りすることもできます。お地蔵さまご一行が舟旅をしているようで、まるで映画のワンシーンのようですね。
お地蔵さま御一行がなぜ舟に!? 奈良・猿沢池『率川地蔵尊』【魅惑のお地蔵さま巡り 第9回】
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顔や形はもちろん、その由来もさまざまですが、地域の人々に愛され敬われているお地蔵さまに、会いに行ってみませんか。