文/印南敦史

「人生100年時代」といわれるようになって久しく、実際のところ平均寿命はいまも伸び続けている。私たちも可能なかぎり、体と心の健康を保ち、「健康寿命」を伸ばしていきたいところである。

健康寿命とは「介護の必要もなく自立して生活できる期間」を意味するわけだが、つまりは単に生き続けるだけでなく、残りの人生をエンジョイするべきなのだ。

『70歳からの老けない生き方』(和田秀樹 著、リベラル社)も、そのような思いを軸として書かれている。

本書のテーマは、70代、80代の人たちが、肉体的老い、精神的老いを予防し、健康寿命=「寿命の質」を延ばし、あるいは高めていき、上機嫌で生きていくためには、どうすればよいか、です。そのテーマにうまく対応できれば、死ぬまで「人生のピークを上書きする」が可能になります。
私は、長く老年精神医学の現場で生きてきましたが、そのために忘れてならないのは70代、80代の高齢期にあっても、「体と心を動かし続けること」だと確信しています。(本書「はじめに」より)

健康寿命を延ばすべきだというのは、忘れるべきではない重要なポイントである。しかし、ともすれば忘れてしまいがちなことでもないだろうか?  事実、年齢を重ねるごとに「もう若くないのだから……」と気持ちから老いていくケースも少なくないように思える。

だが、それはいささか極端すぎる考え方でもあるだろう。もちろん年齢を重ねれば、誰でも老化するもので、生物学上、避けられないことでもある。しかし、心=感情の老化は、意識の持ち方次第である程度はコントロールすることができ、進行を遅らせることが可能だからだ。

著者も、とくに気をつけて予防していくべきは体の老化より、「感情の老化」だと主張している。心が健康で老化しない人は意欲的に活動するため、体も心も使い続けることになる。いいかえれば、老化予防で大事なのは頭や体を「使い続ける」ことなのである。

逆に感情が老化すると、意欲が低下し、頭や体を使うことが億劫になっていくだろう。すると必然的に、身体機能も脳機能も使わないうちにどんどん老化していくことになる。

だとすれば、なにが感情を老化させるのかを知っておきたいところだが、その原因としては(1)脳の前頭葉の萎縮、(2)動脈硬化、(3)神経伝達物質・セロトニンの減少があるのだという。

それぞれを確認してみよう。

(1)脳の前頭葉の萎縮

歳をとるにつれ、脳は前のほうから縮み、前頭葉から萎縮していく。前頭葉とは高次脳機能のうちの、思考や判断などをつかさどる部分。そのため前頭葉の機能を低下させないためには、前頭葉に刺激を与え続けることが重要なのだという。

そのためには、生涯現役で仕事や趣味の活動を続けることが大きな意味を持つ。たとえば「脳トレ」のツールとして紹介されることの多い簡単な足し算も、脳の血流を増やすので効果的。難しい本を読むよりも簡単な計算のほうが、前頭葉への刺激となるようだ。

(2)動脈硬化

歳をとるにつれて次第に血管の壁が熱くなり、血管の内腔が狭くなってくる。すると脳に酸素が届きづらくなり、意欲の低下が生じやすくなる。予防としては、バランスのとれた食生活と適度な運動が大切だそうだ。

(3)神経伝達物質・セロトニンの減少

セロトニンは、幸福感ややる気(意欲)につながる「幸せホルモン」として有名。ご存知の方も多いだろうが、興味深いのは著者がここで「腸内細菌」の話題を持ち出している点である。

「腸内細菌」がクローズアップされるようになってから、ずいぶん時間が経つ。さまざまなメディアで腸の重要性が注目され、善玉の腸内細菌のエサとなるヨーグルトや納豆といった発酵食品の売れ行きが急増するなど、大きなブームになったものだ。

多くの人々の関心を集めた背景に、腸内細菌のもたらす効果が「腸だけではなく脳にまで及ぶ」という点があったように思います。「下半身に存在する腸が頭の脳に影響を及ぼす」ということに驚かれた方も多いかと思います。それは、セロトニンという神経伝達物質が腸内細菌の働きで作られるからです。(本書72〜73ページより)

つまり、腸のなかの細菌類がバランスよく保たれていれば、幸せを感じやすくしてくれるセロトニンが多く分泌されるわけだ。

セロトニン生成の材料となるたんぱく質を摂ることも大事です。
また、セロトニンは、日光を浴びることで分泌が活性化されます。朝の散歩など、太陽の光を浴びながら軽い運動をすることはセロトニンの減少予防に効果があります。(本書73ページより)

腸と脳に重要な関係があることなど、少しばかり意外なトピックかもしれない。いずれにしても、心と体の老化をしなやかに受け入れながら、前向きに毎日を過ごすことが重要なのだろう。

『70歳からの老けない生き方』
和田秀樹 著
リベラル社

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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