文/印南敦史

「健康寿命」ということばに触れる機会は少なくないが、実のところ、その意味をしっかりと理解していらっしゃる方は限られているかもしれない。

では、それはなにを意味するのか?

医師である『60代からの最高の体調 ミネラル・ホルモンで「老いない体」を手に入れる』(平澤精一 著、アスコム)の著者によれば、健康寿命とは「介護を受けたり寝たきりになったりせず、日常生活を送ることができる期間」のこと。

2019年時点のデータでは、日本人の平均寿命は、
男性が81.41歳、女性が87.45歳。
平均健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳。
平均寿命と平均健康寿命の間には、
男性で約9年、女性で約12年の開きがあります。
(本書「健康寿命と平均寿命の違い、知っていますか?」より)

すなわち、支援や介護を必要とし、日常生活に制限のかかる期間が平均で9〜12年あるということだ。自分自身の近い将来にあてはめてみると、なかなかショッキングな数字だといえるのではないだろうか?

だからこそ、健康寿命を延ばし、寿命と健康寿命の開きを少なくすることが大切なのだろう。そうすれば、元気に長く生きられる可能性が増すのだから。

なお、健康寿命を伸ばすために大事なのは「60代以降の体になにが必要であるかをきちんと知ること」なのだと著者はいう。

たとえば亜鉛やカルシウム、マグネシウムなどのミネラル、骨や筋肉、「やる気」などのもとになるホルモンは、年齢を重ねるほどに失われていく。しかし、いま病気ではなかったとしてもミネラルやホルモンが足りていないと活動的に動くことができず、免疫も下がるので心身の調子を崩しやすくなる。

裏を返せば、ミネラルやホルモンを補充したり、生活習慣を60代以降の体に合わせてアレンジすれば、健康寿命は伸ばせるのだ。そこで本書では、そのための具体的な方法を紹介しているのである。

今回はそのなかから、「食事」に関する新常識をご紹介したい。

肥満を改善するためには、食事内容に気をつけるだけでなく、食事の時間帯も重要。そこで無視できないのが「朝食」だ。なぜなら、一日の活動のエネルギー源となる朝食には、脂肪を燃やしやすくする効果もあるからだ。

朝食として体内に食べものが入ると、眠っていた胃腸が活動を始めて体温が上がる。体温が1度上昇すると、基礎代謝量は13%上昇するといわれており、エネルギー消費量が増えると、脂肪が分解される量も増える。つまり、朝食をきちんと食べることが、脂肪燃焼を促すスイッチになるわけだ。

ここで注目すべきは、意志とは無関係に働く「自律神経」である。自律神経は、心身を緊張させ、活動に適した状態にする「交感神経」と、心身をリラックスさせ、休息や睡眠に適した状態にする「副交感神経」によって成り立っている。

両者がバランスをとることで、呼吸数、心拍数、体温、代謝、消化機能などがコントロールされているのだが、夕方以降は体が休息モードに入っていく。そのため代謝を活発にする交感神経の働きが低下し、副交感神経の働きが強まるため、エネルギー消費量が徐々に減っていく。

したがって、同じカロリーのものを食べたとしても、夕食で得たエネルギーは朝食や昼食よりも消費されにくくなる。すると余った糖や脂質などが中性脂肪に再合成され、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられてしまうのだ。

つまり、朝食を豪華にし、夕食を質素にすれば、脂肪が燃えやすくなって脂肪のつきにくい体になるわけである。また朝食重視にすることには、「体内時計のずれがリセットされ、生体リズムが整えられる」「睡眠の質が向上する」というメリットもあるようだ。

私たちの体は地球の自転に合わせ、体温や血圧、ホルモンの分泌などを約24時間周期で変化させており、この生体リズムは体内時計によってコントロールされている。朝になると目が覚め、夜になると眠くなるのも、体内時計の働きによるものだ。

ただし体内時計は徐々にずれていくものであり、生活が夜型化している現代社会はより狂いやすくもある。だが体内時計が正しく機能しないと生体リズムが乱れ、睡眠の質が低下したり不眠になったりする。また、疲労や倦怠感を覚える、意欲、集中力、食欲が低下する、肌が荒れるなどの不調が生じ、高血圧や糖尿病、がん、肥満、うつ病などの病気につながる可能性も否定できない。

もっとも効果的なリセット方法は「起きたら、すぐに朝日を浴びること」ですが、実は「朝食を食べること」にもリセット効果があります。また、体内時計を狂わせないためには、夕食は朝食後12時間以内にとるのが理想的だといわれています。(本書187ページより)

生活習慣をちょっと変えてみるだけで実現できることなので、試してみる価値はありそうだ。

『60代からの最高の体調 ミネラル・ホルモンで「老いない体」を手に入れる』
平澤精一 著
アスコム

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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