文/印南敦史

厚生労働省が公表している「平成28年 国民生活基礎調査の概況」には、「要介護度別にみた介護が必要となった主な原因」が記されています。
それによると、要支援の主な原因は関節疾患であり、要介護の主な原因は認知症や脳卒中です。
要するに、最後までピンピン楽しみ、ゴールするためには、関節を痛めず、骨折や転倒などをしないようにし、脳卒中や認知症にならないようにすればいいのです。(本書「はじめに」より)

『15万人診た高齢者医療の名医が教える 70歳すぎても歩ける体になる!』(安保雅博、中山恭秀 著、だいわ文庫)にはこう書かれている。データがやや古いとはいえ、しっかりとした関節を保ち、脳卒中や認知症を避けるべきであることは現代においても同じだ。取り急ぎ、脳卒中はなんとか避けたいところである。

ところで脳卒中には発症させやすい危険因子があり、それは「修正できない危険因子」と「修正できる危険因子」に分けられるのだそうだ。

前者には年齢(55歳以上で10歳ごとにリスクは2倍に跳ね上がるのだとか)、性別(男性は女性よりハイリスク)、脳卒中の家族歴などがある。そして後者には高血圧、糖尿病、高脂血症、心房細動などの心疾患、肥満、頸動脈狭窄、喫煙、運動不足、過度の飲酒などがあるという。

「修正できない危険因子」は運命のようなものであるだけに、いかんともしがたい部分があるだろう。しかし脳卒中を避けるためには、「修正できる危険因子」をコントロールしていく必要がありそうだ。

そして、そのための有効な方法が「運動」である。脇汗をかく程度のウォーキング(歩くこと)などの運動をするべきだということ。そうすれば血流もよくなり、筋力もつくわけである。また運動量を増やしていけば、持久力もつく。

長く歩いている人は、健康で長生きしています。長く歩けることと生きることは同義といってもいいでしょう。(本書48ページより)

脳卒中になるとほとんどの場合、手足に麻痺が出て、歩くのに難儀することになる。脳卒中で入院中の人は「歩いてトイレに行けるようになると退院も近い」といわれているそうだが、それほど「歩く」「歩ける」ということは健康にとって重要なのだろう。

「中之条研究」という有名な調査研究があります。これは群馬県中之条町で2000年以降継続的に実施されているもので、この地域に住む65歳以上の全住民を対象に、日常の運動状況や生活の自立度、睡眠時間などを調査・分析しています。
この調査研究から「どのような運動をどの程度行えばいいのか」ということもわかってきました。要約すると、「1日2000歩歩くと、寝たきりが予防できる」ということが判明したのです。(本書50ページより)

中之条研究に聞き覚えがある方は少なくないかもしれないが、住民の日常的な行動を観察したこの研究が画期的なのは、「1日2000歩」という数字が割り出されたことだ。

一般的には「1日1万歩歩かなければいけない」というような説をよく耳にするが、著者によればこれは、1965年に発売された「万歩メーター」に引っぱられた風説で、医学的根拠があるものではないらしい。

もちろん1万歩歩けるのであれば、それに越したことはないだろう。が、現実には1万歩まで歩く必要はなく、少なくとも「そうしなければいけない」というものではないということだ。

なお東京都健康長寿医療センター研究所では、歩数別に予防できる病気を挙げているそうだ。

たとえば2000歩だと寝たきりを、4000歩だとうつ病を、5000歩だと要支援・要介護、認知症、心疾患、脳卒中などを、7000歩だとがん、動脈硬化、骨粗鬆症、骨折などを予防できるのだという。まずは2000歩を目標にし、慣れてきたら少しずつ歩数を増やしていくのもいいかもしれない。

外に出る機会がないときは、室内で有酸素運動(酸素の消費を継続して必要とする運動)を行うのも効果的。体の循環機能を高めてくれるからである。では、具体的にどうすればいいのだろうか?

室内をグルグル歩き回るだけでOKです。
この運動は、ステップ運動としてリハビリ医療でも行われています。景色も変わらないし、楽しそうではないと思うかもしれませんが、たとえばテレビを見ながら、音楽をかけながらでもOKなので、それなりに楽しめます。部屋が狭くて歩きにくいようなら、無理せず足踏みだけでも結構です。
たとえば一日3〜4回に小分けして、計30〜40分も行えば、5000歩程度になり、一日の標準的な歩数とほぼ同等になります。(本書60ページより)

蛇足ながら、これは私が実際に行っていることでもある。書き仕事なので椅子に座っている時間が圧倒的に多く、歩く機会が極端に少ないのだ。そこで座り疲れてくるたびに立ち上がり、いつも見ているYouTubeチャンネルを眺めながら、あるいはNetflixやAmazon Primeなどのサブスクで短めの映画などを観ながら足踏みをするのである。

気分転換にもなるし、わざわざジムに通うまでもなく、運動器具にお金をかける必要もない。したがって、運動不足を自覚している方にはぜひおすすめしたいところだ。

『『15万人診た高齢者医療の名医が教える 70歳すぎても歩ける体になる!』
安保雅博、中山恭秀 著
だいわ文庫

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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