文/鈴木拓也

多彩な情報が詰まった焼酎の魅力が伝わる入門書|『本格焼酎マニアックBOOK』

レモンサワーのブームで今注目の焼酎。糖質が含まれていないため、糖分を控えている人にも人気が出るなど、左党以外の広い層にも親しまれている。
ところで、われわれは焼酎について、どれぐらいのことを知っているだろうか?
日本酒やワインには詳しくとも、焼酎となるとあまり分からない人の方が多いかもしれない。

そこで今回取り上げるのが、先日発売された書籍『本格焼酎マニアックBOOK』。焼酎の基礎知識を網羅した初心者には格好の1冊なので、内容をかいつまんで紹介しよう。

■焼酎の三大原料は芋、麦、米

昨今は、さつまいもから造られた本格焼酎が目立つが、かつては麦焼酎が芋焼酎の2倍の出荷量を誇っていた。それが2009年には逆転し、今に至るという。
また一口に芋焼酎と言っても、原料となるさつまいもの品種は何種かあり、どれを使うかによって味わいは大きく変わる。例えば、ジョイホワイトは1994年に登場した比較的新しい焼酎用品種で「フルーティーな香りで綺麗な味わいの酒質に」、実がオレンジ色のタマアカネだと「まろやかで個性的な仕上がりになる」と説明されている。

(本書36~37pより)

(本書36~37pより)

需要は逆転したが、麦焼酎の原料となる麦は、発祥の地である長崎県壱岐島と大分県で盛んに栽培され、ビールの原料としてお馴染みの二条大麦が主流だという。「パンを焼いたような独特の香ばしい風味」が特徴だ。
米焼酎の原料は、もちろん米。かつてはタイ米が主に使われてきたが、コシヒカリのようなブランド米や特産品を採用する蔵元が増え、酵母で香りを華やかにする傾向があるという。

■蔵元は一年を通じて大忙し

芋焼酎の蔵元が焼酎造りに携わるのは、芋が収穫される8月半ばから12月はじめの頃まで。といっても、他の時期は暇なわけではないという。

貯蔵している原酒の管理はもちろん、酒質向上のための研究や新商品の開発、機械のメンテナンスとやることは山積みだ。さらには、全国の酒販店や各イベントに顔を出し、蔵の焼酎のPR活動も欠かせない。(本書19pより)

原料も自ら栽培・収穫する蔵元だと、これに一連の畑作業も加わるわけで、われわれの手に瓶に入った焼酎が届けられるまでに、なんと多くの労力がかかっているのかと思わずにはいられない。本書では、芋の栽培から焼酎の出荷まで、製造の工程を10ページにわたり解説。どのようにして焼酎が生まれるのか、よく理解できる。

(本書36~37pより)

(本書36~37pより)

■焼酎造りに情熱を傾ける人たち

本書では、「躍動する焼酎蔵元」と銘打って、10の蔵のリーダーたちの横顔が紹介されている。「焼酎界のゴッドマザー」や「焼酎王子」と呼ばれる業界のキーパーソンや次世代を受け継ぐ逸材たちが、何を考え何を目指しているか、焼酎造りと真摯に向き合う姿を垣間見ることができる。

(本書12~13pより)

(本書12~13pより)

*  *  *

本書にはこのほか、焼酎と関係の深い九州の神社や名産地に店をかまえるバーや酒店、変わり種焼酎の銘柄、焼酎ブレンダーの一日を追ったルポやカクテルの作り方など、初心者はもちろん焼酎通にもためになる情報が満載。焼酎をもっと楽しんでみたい方は、一読をすすめたい。

【今日の晩酌が楽しくなる1冊】
『本格焼酎マニアックBOOK』

https://www.shinko-music.co.jp/item/pid0646908/

(葉石かおり監修、本体1,700円+税、シンコーミュージック・エンタテイメント)

『本格焼酎マニアックBOOK』文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

 

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