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百年の歴史――。文章に起こすと僅か五文字で済んでしまう事象であるが、「夏目漱石がいまだ存命で、芥川龍之介が漱石の門を叩いた頃の話」と書き換えるとどうであろう?

そんな1915年(大正四年)、世界が第一次世界大戦の激動に揺れる年に鹿児島で創業した「東酒造」。それから百二年、創業者である東喜内(きない)の「何事も自然が一番」という思いを脈々と受け継いできた東酒造は、今では押しも押されもせぬ鹿児島の老舗酒蔵として人々から愛されている。

東酒造歴史(3)_s

鹿児島には「灰持酒」(あくもちざけ)と呼ばれる地酒がある。相当な日本酒通でもなければ恐らく知らないであろうこの灰持酒は、古来より日本で造られた日本酒と起源を同じくするもので、木灰を投入して保存性を高めた伝統的な醸造酒を指す。

鹿児島では昔から地酒と呼ばれ、調理酒や祝い酒として使用された灰持酒。郷土料理「酒ずし」にも欠かせない酒であったが、戦後その製造は途絶えてしまっていた。

そこで喜内は「鹿児島伝統の味を絶やしてはいけない」と立ち上がり、研究と改良を重ね灰持酒の復活に成功するのであった。

一方で「より旨い酒を」との野心も忘れていない。昔から「良い水がある所には良い酒がある」といわれるように、喜内らは鹿児島県内28カ所の湧水を汲んで丁寧に醸造実験と分析を繰り返し、やがて一つの水源にたどり着く。それが鹿児島市にある大重谷の湧水であった。

シラス台地という巨大な天然のろ過装置によって生まれた水は、昔から地元の人々にも愛される清らかな水である。この湧水を使用して醸造された酒はまろやかな口当たりが特徴で、今も東酒造の揺ぎ無き土台を支えている。

「何事も自然が一番」自然の恵み愛した喜内の思いとこだわりが、百年経った今にも生きている。そんな歴史と伝統を持つ東酒造から、期間限定で発売された芋焼酎が『七窪 追麹造り』だ。

追麹とは、焼酎製造の二次仕込みの段階で、もろみに贅沢にも清酒用の黄麹を追っかけで加え、米の量を増量しては濃厚仕込みに仕上げる東酒造独自の製法。

切れ味抜群の「白麹原酒」と、濃厚仕込の「追麹原酒」の相反する原酒を絶妙にブレンドすることにより、さわやかな風味と軽やかな余韻を実現している。まさに「製法と味」をとことん追求したプレミアムな逸品と言えよう。

七窪仕込

百年の歴史に裏打ちされた技術とこだわり。そこから生まれた新たな酒。今と昔をつなぐ絆の酒を片手に東酒造誕生の年に書かれた漱石の『道草』を読めば、また違った風景が脳裏に浮かんでくるに違いない。

七窪追い麹720

七窪 追麹造り 四号瓶(720ml) 1600円(税抜)限定3000本

七窪追麹造り1800

七窪 追麹造り 一升瓶(1.8l) 3050円(税抜)限定5000本

【『七窪 追麹造り』商品についてのお問い合わせ】
電話/099-268-2020(東酒造)
http://www.higashi-sz.com/

取材・文/田中十兄

 

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