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前列中央から時計回りに、ご飯、野蕗のきゃらぶき、煎り豆腐(人参)、鶏そぼろ、漬物(胡瓜と人参の糠漬け・壬生菜・刻み沢庵)、焼き海苔、ごんげん蒸し、大根おろし(葱・鰹節・胡麻)、納豆(葱)、絹さやの浸し(鰹節)、味噌汁(豆腐・若布・葱)、中央右は焼き鮭、左は蒲鉾と山葵漬け。今朝は小鉢に盛っているが、常備菜のきゃらぶきや煎り豆腐、鶏そぼろ、加えてごんげん蒸しなどは大皿で登場し、取り分けていただくことが多い。絹さやは昨夜の残りを浸しに。蒲鉾は、山葵漬け(静岡『野桜本店』の激辛口)をつけて食す。焼き海苔は東京・品川の『みの屋海苔店』のものを愛食。焼き海苔とごんげん蒸しの器の模様は、定紋である揚羽蝶。

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大阪の名門・北野高校の青春食堂は「下町甘味の両雄」【名門校のご近所食堂 第8回】

文/鈴木隆祐

北野高校のある十三は、
大阪中で愛される「下町甘味の両雄」が相並ぶ街

北野高校がある十三は、大阪でも歓楽街として知られる。それも、西口の栄町には風俗店がひしめき合い、東口の(それこそ学校から名を採った)新北野ではラブホテルが軒を並べる、夜ともなればいかがわしさ満載の町だ。

この学校を出た父によれば、昔からそれは変わらないらしい。

「駅までの近道を通ると、お姉さん方が声をかけてくるんだ。『あら、兄ちゃん、男前やなぁ。勉強せいぜい気張りいや。けど、たまには寄ったってぇ。サービスしとくし』って」

“男前”だけよけいだが、父の高校時代は1950年代初頭。つまり売春防止法施行前のことだ。確かに今も、14年3月に大火に遭った西口の通称しょんべん横丁の2階屋の構造などに、いわゆる“ちょんの間”の面影も残る。十三にはキャバ嬢が街頭でキャッチをするような、性にあけすけな雰囲気がなおも漂っているのだ。

北野には真っ当な学校取材で何度か行っているが、いつも思い出すのがこの父の生々しい回想で、ぼくが通っていたら、間違いなく道を踏み外すに違いない。まぁ、某広告代理店に勤務していた父も似たようなものだが……。

「大体、六稜精神とやらが性に合わないんだよ。みんなお高く止まっちゃってさ」

六稜とは北野中学時代、「中」の文字を星形にアレンジした校章のこと。天王寺・市岡・今宮・高津高校なども採用しているが、北野関係者にはその先駆けというプライドが現に高い。九州で育ち、祖父の転勤に伴い、中2で大阪に来た父にはそれが呑み込めないままなのだろう。

北野といえば、錚々たる出身者で知られ、父の同期にも、宗教評論家のひろさちやや儒教学者の加地伸行がいるが、ぼくの少年時代の憧れの人だった、手塚治虫がまずもってそうだ。その頃は漫画家になりたくて、手塚の作品もあらかた読み込んだが、せっせと模写もしていた。

やがて中学に上がり、やたら映画を観るようになると、森繁久彌という役者の軽妙洒脱な才に圧倒された。彼が北野OBと知り、不思議と「らしいな」と思ったものだ。

森繁は北野の校舎がまだ淀川にあった頃の最後の卒業生である。当時を回想し、「北野といえば生真面目な学校で、ヤキイモの立ち喰いも許されなかった。あちこちにデパートが建ち、旨そうな料理が陳列されていたが、程遠いものだった」と森繁は回想している。

父の高校時代となっても、まだ戦争の痛手も癒えておらず、「菓子の買い食いすら贅沢。喫茶店に寄るなど滅相も」なかったそう。青春グルメに関する記憶も乏しい。ただ、江戸時代には中津に渡る渡し場でも親しまれた十三。その頃からある十三焼などは食べたそうだ。

1727年創業の『今里屋久兵衛』のこの焼餅は、中に練り餡が入った白餅、よもぎ餅の二種類ある。小ぶりで薄皮、出来立てに食べると、微かな焦味と品のよい甘さにほっとする。5個入り(350円)が基本なので、ちょっとした手土産にも格好だ。

いくら京大合格者数トップに返り咲いても、北野には父や森繁のような、“愛すべき落ちこぼれ”と呼ぶべき卒業生が一定数いる。そこが魅力だ。大阪府知事から市長となった橋下徹もその一人かもしれない。

橋下は十三で2008年1月、府知事選の立候補表明演説をした。しかも、冒頭から地元民のハートをつかんだ。「北野の時には564人中、いつも560番台。ついた渾名が原子力潜水艦」は常套句だが、その後にこんな台詞を吐いたのだ。

「ねぎ焼きのやまもと、喜八洲のみたらし団子……。ほんっとに懐かしくて、懐かしくて、懐かしくてたまりません!」

みたらしの他、酒饅頭でも有名な1948年創業の『喜八洲総本舗』も、今では大阪中に支店がある。円筒状の団子はあまり他にないが、「炙った時に焦げ目がつきやすく、タレの絡みをよくするため」。その分、ライバルの甘党まえだの団子よりも弾力がある。目の前で炙り、ドボンとタレに浸して提供するのだが、焼き台を見ていると、まるでマシュマロを束で焼いているかに錯覚する。

『やまもと本店』はお好み焼きのルーツとされる、キャベツ不使用の一銭洋食の発展形を「ねぎ焼」として商標登録もしている。1965年の創業で、今では市内に計4店舗を構える。大ぶりの牛すじ、出汁の効いた生地…さすがに元祖の貫禄が光る老舗だ。

これらご当地が誇る庶民派グルメを、巧みに演説に盛り込んだのはさすが。そうやって“自分は絶えず聴衆の側にいる”と訴えたのだ。人を繋ぐのに食べ物の話題を出すほど容易な手段はない。橋下はそのことを知悉していた。

【学校データ】
大阪府立北野高等学校
共学校/創立:1873年
住所:大阪府大阪市淀川区新北野2-5-13
その他の出身者には瀧川幸辰、佐伯祐三、梶井基次郎、野間宏、藤田田、森毅、新井将敬、山田五郎、有働由美子、笠原健治、若木民喜…etc.

文・写真/鈴木隆祐
1966年生まれ。著述家。教育・ビジネスをフィールドに『名門中学 最高の授業』『全国創業者列伝』ほか著書多数。食べ歩きはライフワークで、『東京B級グルメ放浪記』『愛しの街場中華』『東京実用食堂』などの著書がある。近著に『名門高校 青春グルメ』がある。


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