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【名門校の青春食堂 第4回】筑波大学付属駒場高等学校×井上のポークピカタ(東京・駒場)

文/鈴木隆祐

将来のエリートたちの小腹を満たす「太田屋」のフライと「井上」のポークピカタ

筑波大学付属駒場は卒業生のうち大体半数が東大合格を果たすという、怪物級の進学校である。つまり最寄りの駒場東大前駅を6年プラス、大学の教養課程の2年は最低でも使い続けるのだ。

そして、駒場東大前駅には買い食いに格好の惣菜を提供する古参の精肉店、独創性に富んだ昭和チックな自家製パン屋などがまだちらほらある。

とりわけ筑駒生もご近所の駒場東邦の生徒も仲よく愛用するのが、駅前の精肉店『太田屋』。界隈の商店街の成立が1954年なのだが、それ以前の49年創業という界隈の生き字引的な店だ。カウンター左手で弁当や惣菜の販売をしており、ケースに商品がなくても、頼めば揚げ立てを出してくれる。

東京都中央卸売市場のサイトに同店の記事があり、感激して読んだ。二代目店主の太田美雄さん曰く、「(初代の)父は貿易商をしていたのですが、肉が好きで、お肉屋さんを始めてしまった」とのこと。開業時にいた6〜7人の板前のうち一人は80歳を越え、いまだ現役とか!

店の近くには1学年400名前後のマンモス校、日本工業大学駒場高校もある。同校には昔から食堂がなく、太田屋はその弁当納入業者でもあるのだ。もう一軒の店と二手に分け、一時は300食くらい納品していたが、今では校内にコンビニもできたので、「まずは100食少し持って行き、予約を取ってきてはすぐ調理して持っていく」のだそう。

当然、東大も筑駒も駒東生もお世話になっている弁当の価格は300円~500円台がメインで、25年くらいほぼ据え置きという。いくら物価が上がっても、学生(サラリーマンも?)の小遣いはずっと横這いなのである。

テイクアウトでよく出る惣菜はやはりポテトコロッケ(90円)にメンチ(110円)だといい、ぼくはそれらと肉団子を1個ずつ頼んだ。どれも自家製で齧った瞬間、熱さと旨みが口中で暴れ回る。ことにメンチのジューシーさ、肉団子の肉々しさは筆舌に尽くし難い。これが肉屋の正しい揚げ物だ。

*  *  *

ところで最近ではどうも、東大教養学部でも学生向けの飯屋を「コマメシ」などと呼ぶらしい(だったら、本郷では「ゴーメシ」?)。考えてみれば、駒場キャンパス周辺も実に食事処に恵まれてはいる。学内に日替わりランチ800円から楽しめるフレンチ『ルヴェ ソン ヴェール』なども入っているが、ハイブローな定食の『菱田屋』や洋食の『キッチン南海』、サラッと食べやすくてボリューミーなカレーの『LUCY』など選り取りみどり。

その中でかつて高校生も愛用していたのが、『中華 井上』。エビフライなどの洋食も格安で楽しめ、ぼくにとっては理想の店だ。雰囲気も味も界隈では、B級グルメ的にピカイチに光っている。ある晩伺ったところ、女将さん曰く、

「筑駒生は私服なので区別がつかないのよね〜。たまには来てるんじゃないかしら。前は駒東生もよく寄ってくれたんだけど、裏門の位置が変わって今ではサッパリ。でも、東大の応援団の子たちが練習を終えると、決まって来てくれてね、そろそろじゃないかしら」

噂をすれば、影の軍団。黒尽くめの詰襟が大挙して訪れた。旺盛なる食欲を発揮する彼らをよそに、いろいろ買い食いして歩いた後のぼくは、ポークピカタ単品(ライス付で650円)でビールを味わう。このビールが大瓶600円、缶ビール300円と安いのだ。

サクッと卵の衣に歯が当たり、ややパサパサとした肉をもり立てる。醤油をたらり、ソースもちょろり。ピカタは昭和のハイカラママの味。ビールも立ち所に空いた。「お母さん、缶も追加ね!」

【学校データ】
筑波大学付属駒場中学校高等学校

男子校/創立:1947年(中学、高校は3年後)
住所:東京都世田谷区池尻4-1-7
出身者に細田博之、小池晃、後藤田正純、金子勝、四方田犬彦、東浩紀、矢作俊彦、松平定知、矢崎滋、野田秀樹、ケン・イシイ、冨山和彦など。

【店データ】
太田屋
東京都目黒区駒場1-27-11
営業時間 9:30~20:00
定休日 日曜・祝日

中華 井上
東京都目黒区駒場1-10-4
営業時間 11:30 – 15:00、17:00 – 22:00
定休日 日曜

文・写真/鈴木隆祐
1966年生まれ。著述家。教育・ビジネスをフィールドに『名門中学 最高の授業』『全国創業者列伝』ほか著書多数。食べ歩きはライフワークで、『東京B級グルメ放浪記』『愛しの街場中華』『東京実用食堂』などの著書がある。近著に『名門高校 青春グルメ』がある。

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