二十四節気では小寒も過ぎ、寒さが一層厳しくなってきました。寒くて家に閉じこもりがちになってくると、中には便秘でお悩みの人もいるのではないでしょうか?
便秘の原因は様々であり、原因によって対処法も変わってきます。今回は、便秘に対する漢方治療を慶應義塾大学の渡辺賢治先生にお伺いしたいと思います。
そもそも便秘とはどのような状態のことを言うのでしょうか?
「便秘といっても、その状態は人によって大きく異なっています。排便が数日に一回という人もいれば、排便は毎日あるけど便が硬いとか、排便する時にりきんだりお腹を押したりしないといけないとか、便が残っている感じがあってすっきりしないとか、色々な意味で便秘という言葉は使われているのです」
便秘と言っても、人それぞれ状態は違うのですね。便秘の原因は主にどのようなことが考えられますか?
「便秘の原因になる病気やお薬を確認することは非常に重要です。食生活の乱れや心理社会的ストレス、体を動かす量の不足などで便秘になることは西洋医学的にも認識されています」
漢方医学的に便秘というと、どのようなタイプがあるのでしょうか?
「大きく分けて、便秘のタイプは3つに分けられます。ころころした便しか出ないタイプ、ストレスを感じると便秘になってお腹が張るタイプ、疲れやすくて便を押し出す力が弱いタイプに分けられます」
今回は、年齢を重ねるにつれ起こりやすい「ころころした便しか出ないタイプの便秘」の対処法についてお伺いしたいと思います。ころころした便になる原因は何なのでしょうか?
「年齢が進むと体の中に水をとどめておく機能が低下して、肌も目も口も鼻も乾燥します。腸の中も例外ではなく乾燥して便秘になるのです。漢方医学では、このように身体の血液以外の水分(津液:しんえき)が不足した状態を、亡津液タイプといいます。また、体の中に熱があると水が飛んでしまって体が乾燥し、お通じも硬くなりがちです。亡津液証では手足や胸がほてったりすることもありますが、これは体の中の水分が失われていることでかえって熱を生じるためと考えます」
体の水分が失われると便秘になることがあるんですね。自分でできる対処法はどのようなことがありますか?
「体を潤すことが大切です。具体的には、水を充分補うことと、体内から必要以上に水が出てしまうのを避けることの2点を特に心がけましょう。水を補うには、適量の水分を飲食物から摂取して身体を潤し、さらに身体を潤す効果のある食材を摂るようにします。例えば、くるみ、松の実、はちみつ、豆腐、豚肉などが挙げられます。そのほかに生活習慣で気を付けられることは、体内から必要以上に水が出てしまうのを避けるために多量の汗をかかないように注意したり、適量の水分摂取に気を配ると良いでしょう」
漢方薬で便秘の治療はどのように行なうのでしょうか?
「便秘に対する漢方治療でも、西洋薬のように下剤としての成分を含む生薬を使用して便通を促すことが多いのですが、そのような生薬を含んでいなくても、体質にあった漢方薬を飲むことで便通がつく方もいますし、便秘以外の症状も同時に改善できるということはよくあります」
乾燥が原因の便秘には、どのような漢方薬で効果がありますか?
「腸を潤す漢方薬を用いるのが良いでしょう。こうした場合によく用いられるものには、潤腸湯(じゅんちょうとう)や麻子仁丸(ましにんがん)があります。これら2つは腸管を潤す作用があり、ころころ便の解消には非常に有効といえます。これらの漢方薬は薬局やドラッグストアでも手に入りますが、やはり漢方医の診察を受けたうえで、ご自身に合っているものを処方してもらうのが一番です」
■亡津液タイプの便秘改善に役立つ薬膳レシピ案内
漢方薬の「麻子仁丸(ましにんがん)」という、腸を潤して便のすべりを良くするための処方をイメージしたレシピです。おやつにもぴったりな薬膳レシピなので、ぜひ試してみてください。
【材料】
・松の実…15g
・生くるみ…100g
・麻の実(あれば)…5g
・はちみつ…大さじ2
・砂糖…180g
・水…80ml
【作り方】
1.フライパンに麻の実、生くるみ、松の実を順次入れてカラ煎りする。
2.鍋にはちみつ、砂糖、水を入れて火にかける。
3.泡が小さくなり飴がきつね色になったら1を入れて絡ませる。
4.クッキングシートに広げ、冷えて固まったら適当な大きさに割る。
文/葉山茂一(はやま・しげかず)
漢方デスク株式会社代表取締役。漢方・薬膳の総合ポータルサイト「漢方デスク(http://www.kampodesk.com)」を企画・運営。
取材協力/渡辺賢治(わたなべ・けんじ)
慶應義塾大学環境情報学部教授医学部兼担教授。漢方デスクの漢方医学監修を務める。
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