だいぶ春らしくなってきましたね。
今の季節は二十四節気でいうところの「啓蟄(けいちつ)」を過ぎたタイミング、つまり「冬籠りの虫が這い出る」という、まさに春の訪れを示す頃です。
皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回と次回の記事では、今までの連載では触れてこなかった漢方と薬膳に関する気になる疑問を一つ一つ取り上げ、専門家の方にお聞きしたいと思います。
これまで様々な漢方薬についてご紹介してきましたが、そういった漢方薬はどうやって作られるのでしょうか? 慶應義塾大学教授の渡辺先生にお聞きしました。
「漢方薬とは自然界にある植物や鉱物、動物などからできている生薬を複数種類組み合わせたものを指します。何千年という長い年月の経験によって、どの生薬を組み合わせるとどんな効果が得られるか、また悪い組み合わせはどれかなどが確かめられ、漢方処方として体系化されました。 現代の漢方薬も生薬を利用して出来ている薬という基本的な点は変わりませんが、最新技術を駆使して生薬の持つ薬効を引き出し、かつ服用・保存しやすい状態に加工をしています。
漢方薬というと中国のものというイメージがありますが、日本のものとは異なるのでしょうか?
「中国で使用される薬は漢方薬と区別して中医薬と呼ばれますが、日本の漢方薬とは異なる部分が多いです。5世紀のはじめに朝鮮半島から中国医学が日本に伝わってきてから日本化が進み、江戸時代に鎖国の影響もあり、今の漢方医学の基礎ができました。そもそも『漢方』という言葉そのものが日本で江戸時代に作られたものです。具体的には同じ薬でも内容が異なっていたり、適応になる病態が異なっていたりします。
漢方薬の原材料となる生薬はどこで生産されるのですか?
「実は現在の日本で使われる生薬の大部分は中国から輸入されています。生薬全体の8割以上が輸入されており、特に漢方薬の70%以上に配合されていて最も使われる量が多い甘草(カンゾウ)という生薬については、ほぼ100%輸入に頼っている状態です。
輸入が多くの割合を占めるのですね。
「そうですね、それが現在の生薬供給問題につながっています。以前は、日本国内においても多くの栽培農家がいましたが、生産者の高齢化等もあり減少しており、それに伴い生産量も減ってきています。一方最近では中国国内においても需要が高まってきており、乱獲による資源の枯渇が懸念されています。砂漠化の進行など、環境問題から輸出規制品となっている生薬もあります。また経済発展に伴って輸入価格も高騰しています。漢方薬を今後も継続的に使用できるようにするためには、生薬の安定的な供給が非常に重要になってきます。現在、日本国内でも生薬を生産しようという動きが活発になっており、産官学が連携してこの問題に取り組んでいます。