朝晩は特に冷え込む日が増えてきました。
北風が木の葉を払いのけ、タチバナの実が黄色に変わり始めるこの時期の養生としては、ゆっくり起きて早く寝る、身体を寒さから守って温かく保ち、汗をかくような事は避けるという生活習慣を送ることが勧められます。
秋の夜長とも言うように、ついつい夜更かしをしてしまうこともあるのではないでしょうか? 寒くて室内で過ごすことも増え、目の疲れや「かすみ」などを感じる人も多いかと思います。今回は、「かすみ目」に対し漢方がどう有効なのかを、慶應義塾大学の渡辺賢治教授に伺いしました。
目がかすむというのは漢方医学的にどのような状態なのでしょうか?
「かすみ目は、血(けつ)が不足した血虚(けっきょ)の状態であると考えます。血は全身に栄養分を運ぶ役割をしており、血が不足すると全身に栄養分を送ることができないため、体の表面に症状が出てきます。具体的な症状としては、目の疲れや肌の乾燥、爪や髪の毛の不調などです」
血が不足すると、かすみ目の症状につながることがあるんですね。自分でできる養生法にはどのようなものがありますか?
「血虚の改善のためには、血を補う事が重要です。血を作る材料のひとつとして飲食物が必要であり、血を作ったり蓄えたりするには夜間が重要な時間とされています。血虚の改善のためには、睡眠と栄養を充分とって血を補う食材を摂取するよう心がけましょう。血を補う食材としては、豚肉、タコ、卵、ほうれん草、バター、黒ごまなどの食材が挙げられます」
避けたほうが良い生活習慣はありますか?
「血虚証では血の量が不足していますので、その少ない血をさらに消耗させたり、血を作り出すことを妨げる生活習慣は避けましょう。具体的には睡眠不足、疲労、多量の汗をかく、無理なダイエットが挙げられます。
また、かすみ目は、目の疲れや乾燥などによっても引き起こされるので、目を使う時は休憩をこまめに取る、空調の風が直接目に当たらないようにするなどの心掛けも大切です」
かすみ目に対して、漢方薬はどのようなものが用いられるのでしょうか?
「血の不足を補う漢方薬の代表的なものとして、四物湯(しもつとう)という漢方薬があります。その他にも桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)などが体質によって選ばれます」
漢方薬はどこで手に入れたら良いのでしょうか?
「漢方薬を手に入れるには、やはり漢方医の診察を受けたうえで、ご自身に合っているものを処方してもらうのが一番です。特に、すでに病院を受診されている場合は、主治医にまず相談してみましょう。ちょっと試してみたいというのであれば、漢方薬局やドラッグストア、インターネットなどでもお求めになれるものもあります」