8月に入っても記録的な猛暑日が続きました。二十四節気では立秋を過ぎ、暦の上では秋ということになりますが、まだしばらくは暑い日が続きそうです。皆様、いかがお過ごしでしょうか?
暑い日が続き、「なんだか食欲がない」と感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか? 今回は、そんな食欲低下でお悩みの方向けの漢方薬について、慶應義塾大学教授の渡辺賢治先生にお話をお伺いしました。
暑くて食欲がないことが増えてきたのですが、このような場合に漢方薬で対処できるのでしょうか?
「暑いと冷たいものを摂る機会も増えてきますので、胃腸が冷えて働きが弱まっていることが原因として考えられます。そのため、消化が充分に行なわれず胃もたれや食欲低下を引き起こします。このような場合には、まず胃腸を温めて、その動きを良くしてあげることが必要です」
どのような漢方薬があるのでしょうか?
「食欲不振で胃がつかえた感じがする場合に用いられる漢方薬で、六君子湯(りっくんしとう)というものがあります。その他にも、食欲不振で下痢気味の場合は真武湯(しんぶとう)などが用いられます。同じ食欲低下でも、体質やその他の症状によって様々な処方が使い分けられます。今回は機能性胃腸症にも用いられる六君子湯に注目してみましょう」
まず六君子湯とは、どういった漢方薬なのでしょうか?
「消化器や呼吸器を温めて働きを良くしてくれる四君子湯という漢方薬に、吐き気を抑えてくれる半夏、消化器の動きを整えてくれる陳皮を加えて構成されています。消化器や呼吸器の機能が低下したことにより発生した倦怠感や食欲不振、胃もたれ、胸焼けなどに効果があります」
じつは食欲がないだけでなく、胃もたれや胸焼けもずっと続いています。病院の検査では胃に問題はないと言われたのですが、このような場合にも漢方薬は効きますか?
「まさに、そのような検査で胃炎や胃潰瘍などの原因となる病気がないのに、胃もたれや吐き気などの症状があるものを『機能性胃腸症』と言います。病名がついたのは最近ですが、かなり多くの患者さんがいます。この機能性胃腸症に六君子湯が用いられて注目されています」