文/川口陽海
■腰がいつも痛い、重い…。
■マッサージやストレッチをまめにしているのに腰痛が良くならない。
■腰やお尻、脇腹などが張ったり、こわばったり、ひきつったりする。
■骨盤や股関節のまわりが固い、動かない…。
そのような症状が続いていてお悩みなら、もしかしたら原因は骨盤周囲の筋肉や筋膜の癒着かもしれません。
とくに“骨盤の骨ぎわの筋肉筋膜の癒着”は見落とされやすい部分です。
今回は、“骨盤の骨ぎわ”の筋肉筋膜の癒着をはがして腰を楽にする筋膜リリースをご紹介します。
ポイントは【腸骨稜】
骨盤にはたくさんの筋肉や、それを包む筋膜が付着します。
骨盤の中でも、とくにたくさんの筋肉・筋膜が付着するのが【腸骨稜】(ちょうこつりょう)と言われる部位です。
【腸骨稜】は、骨盤の特徴的な丸みを作る部分で、腰のくびれの下のウェストラインのあたりの骨の部分です。
下の図は骨盤を前から見た図ですが、黄色の部分が【腸骨稜】です。
腰に手を当てようとすると、ちょうど自然に手がくる部分です。
治りにくい腰痛は腸骨稜=骨ぎわの癒着をはがす
筆者の腰痛トレーニング研究所では、中々良くならなかったり、一度良くなってもすぐに症状が戻ってしまったりするようなケースでは、この【腸骨稜】周囲の癒着をしっかりとはがす施術をおこないます。
腸骨稜の部分は、ご自身で触るとわかると思いますが、硬い骨の部分です。
普通の治療ではあまり触りませんので、癒着が見落とされやすい傾向があります。
それだけに、しっかりと癒着をはがす(リリースする)と、てきめんに効果があらわれます。
我々が施術をおこなう場合は、骨盤の裏に指をしっかり入れ、骨ぎわを骨ごとつまむようにしながら筋肉筋膜をはがしていきます。
率直に言って痛い施術です。が、痛みと同時に『効く~』という感覚も強烈にあります。
施術のあとは、『腰回りがスッキリ軽くなる』という方が多いですね。
【腸骨稜】に付着する筋肉
【腸骨稜】には、腹筋や背筋、お尻の筋肉(殿筋)など、下の図のようにたくさんの筋肉が付着しています。
これは腰の部分を後ろから見た時の、筋肉の透視図ですが、黄色い半円の部分が左右の腸骨稜です。
一番外側(浅層)の筋肉は薄く透明にしていますが、このように筋肉が何層にも重なりながら【腸骨稜】をはじめとして骨盤に付着しています。
腸骨稜周囲に付着する筋肉には、以下のようなものがあります。
これらの筋肉は、体幹や背骨や骨盤を支えたり動かしたりする役割があります。
例えばこれらの筋肉の一部がなんらかの原因でこり固まってしまうと、同じ腸骨稜に付着している他の筋肉にも影響し、まとめてへばりつくように固まってしまうことがあります。
このような状態を“筋肉・筋膜の癒着”といいます。
筋肉や筋膜の癒着は痛みの原因
筋肉は隣り合ったり重なり合ったりしながら骨から骨につながり、身体を支えたり関節を動かしたりします。
正常な状態であれば、重なり合っていても筋肉と筋肉の間は滑るように動きますので、それぞれの動きが妨げられることはありません。
しかし何らかの原因により癒着がおこってしまうと、へばりついて動きが悪くなったり、本来別々の動きをする筋肉が一緒に動いてしまったり、その部分の循環が悪くなってしまったりします。
これがこりやこわばり、ひきつり、痛み、重だるさなど不調の原因となるのです。
とくに【腸骨稜】のように、たくさんの筋肉が付着している部位は癒着がおこりやすく、一度癒着してしまうとまわりの広い範囲の筋肉に影響が及んでしまい、治りにくい症状の原因となることがあるのです。
腸骨稜=骨盤の骨ぎわの癒着をはがす方法
腸骨稜周囲の筋肉筋膜の癒着は、自分ではがすこともできます。
自分で筋肉筋膜の癒着をはがすことを、専門的には『セルフリリース』といいます。
方法としては
(1)手でリリースする
(2)テニスボールを使ってリリースする
(3)ストレッチ
などがあります。
ひとつずつご紹介していきたいと思います。
自分の手でおこなうセルフリリース
自分で腸骨稜の周囲をリリースする場合は、横向きに寝た姿勢がやりやすいでしょう。
皮膚を直接つかむのが確実ではありますが、薄手の服を着て、またはタオルなどを1枚かけておこなってもよいです。
横向きに寝た状態で腸骨稜に指をかけ、皮膚と肉をしっかりつかみ、そこから前後左右上下などにひっぱるようにしながら動かします。
1ヶ所おこなったら、骨盤の骨の丸みに沿って少しずつ場所をずらしながら、腸骨稜の全体をまんべんなくおこなってください。
文字どおり骨から肉をはがすようなイメージでしっかり目におこなうのですが、力を入れ過ぎて皮膚や筋肉や骨を傷つけないように注意しましょう。
力加減の目安としては『痛気持ちいい』程度が良いです。
片側2~3分程度を目安におこなってみましょう。長時間やりすぎるとかえって痛みを招くことがありますのでご注意ください。
テニスボールを使ったセルフリリース
テニスボールを使って、腸骨稜の癒着をセルフリリースすることができます。
テニスボールをご用意ください。
仰向けから身体を少し傾けて、腸骨稜の骨ぎわにテニスボールを当てます。
※上の画像では“背骨の際”となっていますが、骨盤の骨の際に当ててください。
そこからゆっくりとボールに乗るように体重をかけていきます。
そして息を吐いて身体の力を抜いていきます。とくにボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。
ボールで骨の際をなぞりながら軽く転がすようにして、筋肉筋膜をはがしていきます。
力加減の目安としては『痛気持ちいい』程度が良いでしょう。
強くおこなったり、長い時間おこなったりすると、かえって痛みを招くことがありますのでご注意ください。
これも片側3~5分程度からおこなうのが良いでしょう。
腸骨稜周囲のストレッチ
次のようなストレッチで、腸骨稜周囲の筋肉筋膜を伸ばしてゆるめることができます。
仰向けになり、両脚を楽に伸ばします。
そこから軽くお腹をへこますようにしながら、腰を床に押し付けるように力を入れます。
これは、腰が浮いて腰や背中の筋肉が緊張しないようにするための動作です。
そこから、膝を伸ばしたまま骨盤から動かして踵を押し出します。
上の図では、左足を押し出していますが、その際反対の右足は逆方向に引かれるように動きます。
背中や腰は力を抜いて、お腹や脇腹の筋肉を使って動かしてください。
適度に左のわき腹や骨盤あたりが伸びたところで止め、楽に深呼吸しながら力を抜き、30秒~1分ほど伸ばします。
終わったら脚をゆっくり戻し、反対の足も同じようにおこないます。
これを片側2~3回ずつおこなってみましょう。
※ご注意;
痛みのためにこの動きができない、またはこのストレッチをおこなうと症状が悪化する時はやめてください。
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文・指導/川口陽海
厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616
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