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文/印南敦史

脳を活性化させて若返らせる画期的な方法|『脳が若返る15の習慣』「このところ、物忘れがひどくなった気がする」
「人の名前をすぐに思い出せない」
「昨晩食べたメニューが思い出せない」

たとえばこのようなことは、誰にでもあるはずだ。そして、そんなときには多くの場合、「よくあることだ」「年をとってきたんだから、仕方がない」などと軽く考えてしまいがちでもあるだろう。

しかし、それは脳の老化が始まっているせいかもしれない。そのままにしておくと、脳の老化はどんどん進んでいく。しかも早い人だと、40代からその兆候が出てくる。

『脳が若返る15の習慣』(飛松省三 著、フォレスト2545新書)の著者は、そう警告している。臨床神経生理学を専門とする、九州大学大学院医学研究院で教授を務める人物である。

とはいっても、「老化には抗えない」とあきらめる必要はないようだ。脳の老化の進行を抑えるだけでなく、脳を活性化させて若返らせる画期的な方法があるという。

しかも、特別な薬や医療機器は不要。毎日の行動や習慣をちょっと変えるだけで効果が見込め、いくつになっても、誰にでも簡単にできるのだそうだ。つまり大げさに考えて特別なことをするのではなく、日常生活のなかでちょっとした工夫をするだけでいいということ。

この本では、私が普段何気なく行なっている、脳の老化を防ぎ、若返らせる15の習慣を取り上げて、なぜそれが脳の活性化に役立つのか、脳科学的エビデンスを挙げながらわかりやすく解説していきます。(本書「はじめに」より引用)

著者が実際に行ない、国際英文誌に掲載された研究成果と、脳科学的に「確からしい」とされている脳科学の知識を組み合わせた、きわめて信頼性の高い内容になっているわけだ。

今回はそのなかから、趣味と連動させることもできそうな「第4の習慣『楽器を弾く』」に焦点を当ててみたい。楽器を弾くことで、脳を活性化させることができるというのだ。

「50の手習い」で努力すれば、誰でもそれなりの演奏が楽しめるようになることだろう。とはいえ、若い人にくらべれば上達には時間がかかるのも事実。それは、練習や学習に伴い、脳の構造と機能が変化するから。

「可塑性(かそせい)」といわれ、脳科学の世界では「変化ができて、その形を維持できる」性質のことを指すのだという。

そして脳の可塑性の程度は、練習や学習を始めた年齢に関係がある。たとえば、いい例がバイオリンである。

バイオリンは、演奏するときに弦を押さえるため、左手の小指をよく使います。一方、演奏しない人の場合は、親指の方をよく使い、小指はあまり使いません。したがって、大脳の運動・感覚野の左手親指の領域は、小指の領域より広いことになります。(中略)
小さいときからバイオリンを練習している人の左手小指を刺激すると、大きな反応が記録されました。これは、大脳皮質の小指を担当する領域が広がっていることを示しています。(本書45~46ページより引用)

5歳とか10歳から始めた人は大きく広がるものの、14歳以後に始めた場合は、わずかしか広がらない結果になったのだとか。つまり大脳皮質の指の情報を処理する領域が、繰り返しの刺激によって変化すること、そして、その変化の程度は練習開始年齢と関係することがわかったというのである。

したがって、楽器を幼年期から習い始めることは理にかなっているということになる。が、だとすれば「50の手習い」に意味はないのだろうか? 決してそうではなく、そこが脳の興味深い点なのだと著者はいう。

年をとると自己ペース運動が落ちてきますが、運動野以外の多くの場所がそれを補ってくれます。
音などから運動前野を動かす外的ペースの回路は、健康ならば年をとっても保たれます。楽器を奏でることは、自己ペースの運動回路と外的ペースの運動回路を使うことになります。
繰り返しの刺激によって脳の機能が変化することを「使用依存的可塑性」といいます。この使用依存的可塑性は、リハビリテーション医学で、今注目されています。(本書47ページより引用)

つまり、反復訓練が機能回復の重要な神経基盤であるということ。楽器などの運動を繰り返し行なうことによって、より早く機能回復を実現できるのだ。

そしてその状態は、練習終了後もある一定期間保持される。なぜなら、運動に関わる神経ネットワークが効率化され、増強され、その変化が持続するから。

だからこそ、自分の好きなことでできるだけ手先を使い、繰り返し行なうことが重要なのだ。そのひとつが楽器であり、手先を使うのであれば楽器以外でもOK。少ない神経リソースで効率的な運動が、脳を活性化してくれるということだ。

『脳が若返る15の習慣』

飛松省三 著

フォレスト2545新書

900円(税抜)

2019年10月発売

『脳が若返る15の習慣』(飛松省三 著、フォレスト2545新書)
文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

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