文/鈴木拓也
京都・祇園に生まれ、母が手作りする漬け物が当たり前にある家に育った、料理家のこてらみやさん。
そんなこてらさんにとって、ふだんの食事に自家製の漬け物(こてらさんは、「お漬けもの」と呼ぶ)は欠かせない。
塩、しょうゆ、みそといった、ごく身近な調味料で作るお漬けものは、既製のものと異なり保存料といった添加物が含まれず、野菜本来の味に発酵の旨味が加わったもの。一度それを知ったら、「市販品には戻れなく」なるという。
先般、こてらさんは、東西の様々なお漬けものの作り方をまとめた書籍『まいにち お漬けもの』(世界文化社 https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/24303.html)を上梓、好評を得ている。
本書には、お漬けもの45種とそれを素材に作る料理29レシピ、くわえて、ぬか床の仕込み方といった基礎知識が、ぎっしり詰め込まれている。野菜料理を毎日楽しみたいという方には、特におすすめしたい1冊だ。
今回は参考までに、収載されているレシピ3点を紹介する。
「塩玉キャベツ」
野菜のおいしさがシンプルに味わえる塩漬け。把握すべき若干のコツはあるが、作り方は簡単。その1つ「塩玉キャベツ」の作り方は以下のとおり。
【材料】
・キャベツ……1/2個(500g)
・玉ねぎ……1/4個(50g)
・塩……野菜の合計正味料の2%(11g)
【漬け方】
1. キャベツは芯を切り落とす。太い葉脈は切り取って斜め薄切りにし、葉はざく切りにする。玉ねぎは縦薄切りにする。合わせて水洗いしてざるに上げる。
2. ボウルに1と塩を入れ、混ぜて塩を全体にまわす。5分ほどおいてしんなりしたら、野菜の上下を返して塩をむらなくなじませる。
3. ポリ袋に入れ、空気を抜くようにして口を閉じる。
4. 重石をのせ、水分が出るまで常温で1~2時間漬ける。その後は重石を取って冷蔵庫へ。食べる時に軽く汁気を絞る。
漬け上がり後、5日ぐらいまでが浅漬け。それ以降から古漬けになっていき、1か月を目安に食べ切る。乳酸発酵がすすむ漬けものは、自分好みの酸味のタイミングで賞味できるのも手作りのメリット。冒頭の写真のように、ちぎった青じそをのせてオリーブオイルを回しかけると、サラダ代わりになる。
「塩玉キャベツ」は、料理の素材として活用することも可能。例えば、「キャベツとトマトの蒸し煮」(2人分)は、以下の食材・手順で作る。
1. 鍋に汁気がついたままの「塩玉キャベツ」150gを入れ、1cm厚さの半月切りのトマト1個分と4等分にしたベーコン3枚分、ローリエ1枚を加えて水をひたひたに注ぐ。
2. 中火にかけ、ひと煮立ちしたら蓋をして弱火にし、トマトが崩れて汁となじんだら塩と粗びきこしょうで味を調える。
「焼酎漬け」
あまり馴染みのない、焼酎に漬けたお漬けもの。こてらさんは、「野菜の成分と合わさることでフルーティーな仕上がりに」なると説明する。1日おくと、まろやかになるそう。
【材料】
・大根……1/4本(300g)
・にんじん……1/2本(100g)
・きゅうり……1本(100g)
A:
・赤唐辛子(半分にちぎって種を取る)……1本分
・塩……野菜の合計正味量の2%(10g)
・砂糖……野菜の合計正味量の1%(5g)
・焼酎(麦焼酎などくせの強くないもの)……大さじ3
【漬け方】
1. 大根は厚めに皮をむき、にんじんも皮をむく。大根は5mm厚さのいちょう切り、にんじんは3mm厚さの半月切りにする。きゅうりは5mm厚さの斜め切りにする。
2. ポリ袋に1とAを入れ、軽くもんで調味料をなじませる。しんなりしたら空気を抜くようにして口を閉じる。
3. 重石をのせて常温で3時間ほど漬ける。その後は重石を取って冷蔵庫へ。
1週間を目安に食べ切る。
「ミックス野菜のピクルス」
本書には、韓国、中国、そして西洋のお漬けもの(ピクルス)も登場。その1つである「ミックス野菜のピクルス」は、料理で余った野菜を活用するのにとても便利。また、発酵しない漬けものだから、日持ちするのも嬉しい 。
【材料】
・紫玉ねぎ、パプリカ、かぶ、カリフラワー、セロリ、ニンジン……合わせて300g
これら以外の好みの野菜もOK。生でも食べられて歯ごたえのよいものがおすすめ。
・にんにく……1かけ
A:
・酢、水……各250ml
・塩……小さじ2
・砂糖……大さじ2
・ローリエ……1~2枚
・コリアンダーシード……小さじ1
・粒黒こしょう……小さじ1/2
【漬け方】
1. 紫玉ねぎは1cm幅のくし形切り、パプリカはヘタと種を取って1cm幅の縦切りにする。かぶは茎を少し残し、皮をむいて1cm幅のくし形切り、カリフラワーはひと口大の小房にする。セロリはすじを取って5cm長さ、1cm幅の拍子木切り、にんじんは皮をむいてセロリと同じサイズに切る。にんにくは6等分くらいに切る。
2. 清潔な耐熱保存びんに1をなるべく隙間ができないように、ランダムに詰める。
3. 鍋にAを入れてひと煮立ちさせ、弱火で1~2分煮る。
4. 熱々の3を2に注ぎ入れる。ラップで落し蓋をして、常温で粗熱がとれるまで漬ける。その後はびんの蓋をして冷蔵庫へ。翌日からが食べ頃。
1か月を目安に食べ切る。
料理写真:キッチンミノル
【今日のおいしい1冊】
『まいにち お漬けもの』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。