文/鈴木拓也
薬膳といえば、高価な食材を使う手のこんだ料理というイメージがある。
しかし実際は、身近な材料を用いて、さほど手間もかけずに作れるものが多い。
その1つが、調味料の「薬膳たれ」。調理時に加えるだけなので簡単で、作り置きも可能。それで身体の不調改善に役立つのだから、食生活に取り入れない手はない。
こうした薬膳たれを数々考案し、著書『万能!薬膳たれ』(河出書房新社)にまとめたのは、国際中医師で薬膳研究家の新開ミヤ子さん。本書では、9種類の薬膳たれの作り方を、豊富なレシピとともに掲載している。
甘み、辛味、香りが合わさった奥深い味わいの「旨辛香味だれ」
新開さんが取り上げている薬膳たれの1つが、この「旨辛香味だれ」。血行をよくし、胃の不調を改善し、疲れをいやすなど様々な効能があるという。素材は、スーパーで入手できるものばかり。材料と作り方を紹介しよう。
【材料】
A:
酢……大さじ2
砂糖……大さじ2
オイスターソース……40g
しょうゆ……大さじ6
B:
太白ごま油……大さじ4
にんにく(みじん切り)……4片分
小ねぎ(小口切り)……5本分
粉唐辛子(細挽き、一味唐辛子でも)……大さじ1
花椒(粉)……小さじ1
【作り方】
1. 耐熱ボウルにAを合わせる。
2. 小さめのフライパンにBのごま油、にんにくを入れて弱火で2分熱し、香りが出たら小ねぎを加え、混ぜながら1分ほど加熱する。
3. 粉唐辛子を加えて1分ほど加熱し、しっかり油になじんだら花椒を混ぜ、さらに1分加熱して火を止め、1に加えて混ぜる。そのまま自然に冷ます。
完全に冷めたら密封できるガラス瓶などに入れ、冷蔵庫で保存する。保存期間は約1か月。
5分でおいしく作れる「牛しゃぶの生野菜添え」
「旨辛香味だれ」は、肉や卵料理に合い、サラダや温野菜のドレッシングにも最適だという。基本的に和えるだけでOKで、本書の「牛しゃぶの生野菜添え」もそうした使い方となっている。効能は、乾燥、胃弱、疲労、冷え(乾燥は、肌の乾燥だけでなく、多汗や吐き気など中医学的な視点の症状も含む)。
【材料(2人分)】
・牛肉(しゃぶしゃぶ用)……200g
・お好みの生野菜……各適量
・酒……大さじ1
・旨辛香味だれ……大さじ3
【作り方】
1. 鍋に1リットルの湯を沸かして酒を加え、再び沸騰したら牛肉を入れて火を止める。菜箸でほぐすように混ぜて肉の色が変わったらざるに上げ、水けをしっかりきる。
2. ボウルに1、旨辛香味だれを入れて和え、皿に盛って生野菜を添える。
元気が出て、イライラも改善する「さば缶と豆苗の旨辛炒め」
こちらは、さばの水煮缶詰を使った手軽な炒め物。みそ煮など、好みの味がついた缶でかまわないそう。効能は、乾燥、胃弱、ストレス、疲労となっている。
【材料(2人分)】
・さば缶(水煮缶)……1缶(固形量110g)
・豆苗……1袋
・塩……少々
・旨辛香味だれ……大さじ1と1/2
・ごま油……小さじ1
【作り方】
1 フライパンにごま油を入れて中火で熱し、半分の長さに切った豆苗を広げ入れて塩をふり、返す。蓋をして弱火で1分蒸し焼きにして皿にとる。
2 フライパンをきれいにし、缶汁をきったさば缶、旨辛香味だれを入れて中火で温め、1にのせる。
* * *
本書にはこのほか、「秘伝・焼肉のたれ」「食べる薬膳ラー油」など、聞いただけで美味しそうな薬膳だれと応用レシピが取り上げられている。健康がちょっと気になる方は、作ってみてはいかがだろうか。
本書料理写真:松永直子
【今日のおいしくて健康に良い1冊】
『万能!薬膳たれ』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。