文/鈴木拓也

創業は1803年。以来、2世紀余りにわたり京菓子店の看板を掲げてきた「亀屋良長」。

この名舗が、先般刊行したのが『あんこのお菓子帖 京菓子司「亀屋良長」』(文化出版局)だ。

本書は、あんこを多用した菓子のレシピ集。長らく秘伝とされてきた看板の一品から、21世紀に入って生まれたヒット商品まで、数々の菓子の作り方を記した1冊となっている。今回は、その一部のレシピを紹介しよう。

亀屋良長流の「粒あん」

「亀屋良長」の菓子作りは、基本中の基本となるあんこから始まる。本書に掲載されているあんこは、こしあん、つぶあん、白あんの3種類。いずれも懇切丁寧な作り方が解説されている。ここでは、粒あんの作り方を紹介しよう(本書では工程ごとに写真が付されているが割愛)。

【材料(でき上り約750g)】
・小豆……250g
・てんさい糖……220g

【作り方】
・小豆を煮る(目安は約25分)
1. ボウルに小豆と水を入れ、やさしく洗って豆の汚れを取り、水をきる。
2. 鍋に豆を入れて、水を豆の上の2cm上までくわえ、火にかける。
3. 沸騰したら火を弱め、豆が踊らない状態で約3分煮、水200mlを加える。
4. 再沸騰したら水400mlを加え、弱火で静かに煮る。
5. 皮のしわがなくなり、ふっくらするまで弱火で静かに煮る。
6. ボウルで受けたざるにあける。
7. ボウルの煮汁はとっておく(本書には煮汁を使ったレシピもある)。
8. 豆は水を流しかけてやさしく洗う。

・本炊き(目安は35~40分)
9. 鍋に豆を戻し、水を豆がひたひたにつかるくらい入れて、強火にかける。
10. 沸騰したらお玉などであくを取り除く。
11. 落しぶたと鍋のふたをしてごく弱火で煮る。途中、水が減ってきたら水を足し、さらに煮る。ふきこぼれないように注意。
12. へらなどに豆をのせて指でつぶし、やわらかさをチェックする。小豆の皮も充分にやわらかく、簡単につぶれたらOK。
13. 火を止め、水400mlを加える。
14. 鍋に呉(豆の中身の部分)が沈澱するのを待ち、上澄みを捨てる。

・あんを作る(目安は約20分)
15. てんさい糖を加えて強火にかけ、へらできるようにそっと混ぜる。
16. 沸騰したら弱火で煮詰めていく。焦げないように注意する。
17. あくを取りながらふつふつとした状態を保ち、豆をつぶさないように時々鍋底から返す。
18. 鍋底をへらで混ぜても水分が出てこず、豆がぽってりとするまで煮る。
19. へらですくって落とすと山が少しくずれるくらいになったら火を止める。冷めるとしまって固くなるので少しやわらかいくらいでOK。
20. 少量ずつすくってバットに広げ、冷ます。
21. 粗熱が取れたらラップフィルムをぴったりとかけ、上から軽く押し広げて空気を抜く。

・保存方法
あんは平たくしてラップフィルムに包んで密封袋に入れ、冷蔵で1週間、冷凍で1か月保存可能。使う時は自然解凍(夏場は冷蔵庫)で。

・ポイント
→ 煮る時間は豆によって個体差があるため、表記時間はあくまでも目安に。
→ 砂糖を加えると豆はかたくしまるので、本炊きで充分にやわらかくなるまで煮る。

日本の伝統菓子「おはぎ」

粒あんと道明寺の組み合わせで、まさに「口の中で溶けるような繊細な舌触り」を堪能。一般的な丸型ではなく、腰高に丸めると見た目もすっきりする。

【材料(10個分)】
・上白糖……20g
・塩……ふたつまみ
・道明寺粉……100g
・粒あん……200g
・きな粉……適量

【作り方】
1. 小鍋に水170ml、上白糖と塩を入れて中火にかける。沸騰したら道明寺粉を加え、粒がだまにならないように、さっと箸で混ぜる。再度沸騰したら火を止め、ふたをして10分蒸らす。
2. ラップフィルムを広げたバットに1.を取り出し、粗熱を取る。
3. 2.が温かいうちに、ぬらした手で10個に丸める。
4. 粒あんを10個に丸める。
5. 4.のあん玉5個をてのひらで広げ、3.の道明寺を包む。下まで包みきらなくてもOK。
6. 残りのあん玉5個をてのひらで広げた残りの道明寺で包んで、茶こしに入れたきな粉をかける。真ん丸でなく、腰高に丸める。ぬれぶきんで手を湿らしながら包む。

和洋のおいしいコラボ菓子「あんスコーン」

「亀屋良長」は、老舗の枠にとらわれることなく、様々な新作菓子にも挑戦している。なかでも和菓子の材料を用いた洋菓子は、若い人にも人気のジャンル。ここでは、「あんスコーン」を取り上げよう。

【材料(6個分)】
・粒あん……100g
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  薄力粉……80g
  アーモンドプードル……20g
  上白糖……小さじ1
  ベーキングパウダー……小さじ1
  塩……ふたつまみ
・米油……25g
・メープルシロップ……小さじ1

【準備】
・オーブンを180度に温めておく

【作り方】
1. ボウルにaを入れて泡立て器で混ぜ合わせる。
2. 1.に米油を加えて手ですり混ぜ、ぼろぼろのそぼろ状にする。
3. 粒あんとメープルシロップを加えて、軽く混ぜてひとまとめにし、5~6回折りたたむようにこねる。
4. 6等分にして丸め、手で押して2cmほどの厚さにする。
5. 180℃のオーブンで約40分焼く。焼きたてに好みでクリームを添える。冷めた場合は食べる前にオーブントースターで温めると良い。

* * *

本書にはこのほか、「亀屋良長」の代表銘菓である「烏羽玉(うばたま)」をはじめとした定番や、こしあんを作る際に残った豆の皮を活用したオリジナル菓子といったレシピが、惜しみなく公開されている。お菓子好きなら、ぜひとも手に入れておきたい1冊といえるだろう。

本書内レシピ写真:伊藤信

【今日のおいしい1冊】
『あんこのお菓子帖 京菓子司「亀屋良長」』

亀屋良長著
定価1870円
文化出版局

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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